一昔前の日常 (八尋+千尋) 男兄弟2人で暮らすには丁度いいぐらい…むしろ広いぐらいの広さの部屋で八尋と千尋は暮らしていた。 「兄貴邪魔。ちょっと退いて」 「いま無理」 「掃除出来ねーんだけど」 「他んとこやれよ」 「やった。あと兄貴んとこだけなんだけど」 「へぇ……」 「だから退いて」 掃除機を片手にもつ千尋の目の前に堂々と机に向かって鎮座する八尋 そんな八尋の手の中には千尋が見ても到底理解出来ないような内容の文書や記号が陳列しており、八尋はそれを隈なく目を通して確認していた。 仕事だと言うことは千尋も分かっていて、それを考慮した上で八尋を避けて掃除機をかけていたのだがそれも終わり、残すところ八尋が陣取っている机周辺だけとなっていた。 「面倒」 「面倒臭がるな……すぐ終わるからソファー行って」 「へーへー」 のっそりと資料片手に立ち上がった八尋がソファーへ移動したのを横目に確認すると、千尋は素早く掃除機をかけて掃除を終わらせた。 「千尋ーお茶」 「自分で行け」 ソファーに移動した八尋は掃除が終わっても元の位置に戻ることなくソファーに根付き、弟をまるで家政婦の如く扱う それも今に始まった事ではない 時間やすべての事にルーズで雑な性格の八尋が兄であるが故に千尋は家庭的できっちりした、世話焼きな性格になってしまったのだ。 その結果、昔からこういう事がしょっちゅうあって、今では日常茶飯事になってしまっているのだ。 「……そう言えば兄貴、昨日何時に寝た?」 「夜中の3時」 「はぁ……身体壊しても知らねーよ?」 「まあ、なんとかなる」 「あのなぁ……」 寝る事すら二の次にしてしまう八尋 そんな八尋を弟ながらに心配する千尋だが、八尋はその言葉すら耳を貸さない。 そんな、彼等の日常 ー END ー [5/16] |