短めの噺 | ナノ




兎と猫(夏希と玲)

「おはよーございまーす……? あれ? 悠ちゃん今日居ないの?」
「みたいですね」
「じゃあ今日、誰が衣装さんしてくれるのかな?」


いつも仕事場に行くと先にいて出迎えてくれる悠ちゃんが見当たらなくて、なんかちょっとそわそわする。
悠ちゃん、どーしたのかな?


「代わりの人が来てくれるみたいですよ」
「誰ぇ?」
「来たら玲くんも分かりますよ」
「フジくんのケチぃ……教えてくれてもいいじゃーん」


机に腕を伸ばして伏せるようにしながら隣に立つフジくんを見ると、フジくんは何故か顔を逸らして僕を見ようとしてくれない。
フジくんのけちっ。


「おはようございますっ。ごめんなさい、遅れちゃって……もう撮影始まってますか?」


足をぷらぷらさせて遊んでいたらそんな声が聞こえてきて身体を起こして入り口を見ると、見たことある人が大きなカバンを持ってこっちにやって来た。


「撮影自体は始まっていますが、玲くんの番はまだなのでセーフですよ、夏希さん」
「あ、なっちゃんだーっ」
「それなら良かった。玲くん久しぶりだね」
「久しぶりぃ〜」


にっこり笑いかけてくれるなっちゃんに僕も笑い返して手を振る。
するとなっちゃんも手を振ってくれた。


「さてと、玲くん」
「なあに?」
「着替えよっか?」
「はーあいっ」


なっちゃんに連れられてメイク室に移動してなっちゃんに渡された服に着替えてると、なっちゃんも隣で一緒に着替え出した。
僕が黒いネコミミのついた服で、なっちゃんが藤色っていうの? 薄い紫色のウサミミのついた服だった。


「なっちゃんも着替えるの?」
「今日は俺も一緒に撮影だからね」
「そーなの? じゃあいっぱいぎゅーするねっ」
「あはっ。それは光栄だけど、玲くんのファンに刺されそうだなぁ」
「えー? なんでえ?」
「玲くんが可愛いからね」


着替えが終わると、メイク台の前に座るように言われてたから座るとなっちゃんがメイクしてくれて髪も整えてくれた。

いっつも悠ちゃんにして貰ってるからなんか変な感じーっ。
たかくんの事、なっちゃんとお話できたら楽しそうなのになーっ。


「さてと、行こうか」
「うんっ」


なっちゃんと一緒に戻る途中で、現場に入る前になっちゃんに「せっかくだし写真撮ろっか」って言われて、服に付いてたフードをかぶって一緒に写真を撮った。
あのねあのね、なっちゃんね、すっごくいい匂いしたよ!
僕、なっちゃんの匂い好きかもっ。

なっちゃんとフード被ったまま現場に入ると、出迎えてくれたフジくんが口元を手で隠して震えた。
うん? フジくん、体調悪いのかな?


「フジくーん? だいじょーぶ?」
「大丈夫、です……玲くん、そのまま猫耳を持ってカメラに向かってポーズ決めてください」
「こう?」


いつものフジくんに戻ったらスマホを向けて来たからフジくんの言われた通りにポーズ決めると、フジくんは連写してきた。
んーと、たかくんに送るのかな?
じゃあ……


「フジくんフジくん、動画にしてっ」
「はい、どうぞ」


画面を少し操作したフジくんがそういったのでにこっと笑って近づいて猫さんのポーズして「にゃあ」と鳴くと、フジくんが顔をまたそらした。
んもー、フジくんいっつも顔そらすんだもん……ちゃんと撮れてるのかな?
なんて思ってるとピロリンって音が鳴ってフジくんがスマホをおろした。


「玲くん、そろそろ撮影ですよ」
「はーあい。なっちゃーん」
「今いくよ」


カメラマンさんの前に行く途中で振り返ってフジくんに向かってべーってすると、フジくんの他にも後ろの方にいたスタッフさんも一緒に笑った。


「玲くんがいる現場はいつも和やかだね」
「うん?」
「そうだな……癒しの空間ってところかな」
「んー……分かんない」
「ははっ、それもそっか」


隣に立ってるなっちゃんにぽんぽんと頭を撫でられてもやっぱりなっちゃんの言ったことの意味は分からない。
どーゆーことなんだろ?

ー END ー



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