短めの噺 | ナノ




ハンバーグサンド(玲と賢士)

試作で作ったハンバーグサンドを美味そうに頬張る玲を見てると昔を思い出す。
玲の父さんが夕方、まだ小学校に入学もしてない玲を家に預けて仕事に行った日のことを。
もっと前から親同士が仲良いから玲はちょくちょく「けんにーっ」なんて言って遊びに来ては俺に飛びついてきていた。
それが俺は弟が出来たみたいで嬉しかったのを覚えている。


****


夕飯前、リビングでカーペットの上で座って本を読んでいたら玲が母さんと手を繋いでリビングに来て、流しできゃっきゃと楽しそうに手を洗った。


「玲くん、今日はハンバーグでもいいかな?」
「れーはんばーぐすきぃ」
「ならよかった。出来るまで賢士と遊んでてね」
「はーあいっ」


そんな会話が聞こえたと思えば、トタトタと可愛らしい足音が近づいて来て近くで止まった。


「けんにーおひざっ」
「ん」


腕を上げて玲が入るスペースを空けると、ストンと玲が俺の膝の上に座った。
玲は俺の膝に座ると、机の端の方に置いてあったお絵かき帳を引っ張って来て何も描かれていないページを開き、近くにあった俺の筆箱の中から鉛筆を取り出すと俺を見上げてきた。


「けんにー、えんぴつ……」
「ん? ……あぁ、持ち方な。えっとな」


俺が玲に正しく鉛筆を持たせると、玲はページいっぱいに大きく絵を描き始めた。
このお絵かき帳もそうだが、他にひらがなの練習帳や絵本が置いてあったりする。どれもこれも玲が遊びにきた時に初めて使われるもので、普段は部屋の片隅に置かれて玲が来るのを今か今かと待ちわびてる。


「玲、なに描いてんだ?」
「おかーしゃん」
「上手だな」


玲の邪魔にならないように撫でてやれば、玲は嬉しそうに笑う。
玲の絵が完成した頃、母さんから「ご飯が出来たよ」と言われ、そしてちょうどいいタイミングで父さんが帰ってきた。


「玲くん、口元にハンバーグが付いてるわよ」
「……う?」
「ここ」


4人で食卓を囲み、ハンバーグを食べていると母さんが玲を見て微笑みながら自分の口元を指差していて、それを言われた玲はフォークを咥えながら不思議そうに首を傾げていた。
俺はそんな玲の顔を軽く覗き込んで口元のハンバーグを取って食べると、玲は「れーのはんばーぐっ」なんて言ってふくれっ面になった。


「ほら、あーん」
「あむっ」


拗ねた玲に自分のハンバーグを一口サイズに箸で切り分けて玲の口元まで持っていくと、玲はパクリと食べて幸せそうにふにゃふにゃと笑った。
そんな俺たちのやり取りを見ていた両親は微笑ましそうに見守っていた。


****


そんな事を思い出して、当時の玲が今の玲と重なって可愛くて軽く吹き出すと玲は不思議そうに俺を見て首を傾げた。

「賢兄?」
「なんでもねーよ。それ、美味いか?」
「うんっ!」

ニコニコと笑い、残りを美味そうに頬張る玲はやっぱり昔を思い出させる。
玲はあまり覚えてないだろうがな。


ー END ー



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