白と黒の境界線 「そういや憐、聞いたか?」 「なにを?」 「珠貴の奴のツレと舞桜がお前んとこと龍雅の嫁に色々と吹き込んだみてぇだぞ」 そう言って酒を煽り、新しい酒を頼んだ諒。 吹き込んだって……そりゃいつの話だ? 前に恋人同伴で集まって飲んだ時か? 「色々ってなんだよ」 「俺が知るか」 「お前の嫁も絡んでる話だろ?」 「あいつが俺に言うと思うか?」 「面白がって言うだろ」 「……言うな」 「だろ?」 絶対、諒が忘れてるかテキトーに聞き流してただけだろうな。 まあ、どうでもいいけどな。 澪にとっては世間を知ることのできる友達であって、更に色々な事を教えてもらえる存在だ。 余計な事だろうが、澪がそれを俺に試そうとしてる姿はさぞかし可愛いだろうな。 「澪、無知なんだろ? 真っ白だよな……」 「俺には眩しすぎるぐらい真っ白だ」 「だろうな」 ケラケラと笑いながら新しい酒を煽る諒。 澪は真っ白だが舞桜も十分白いだろ、なんて言葉を言うだけ無駄か。 分かりきった事だ。 俺らの恋人は皆白いからな。 表の世界でのびのびと暮らして来た奴らだからな……澪は"こっち側"に囚われていたが、染まる事なく真っ白なままだ。 いい事だよな。 このままなにも知らずに暮らさせてやりてぇな。 何色にも染まらない、真っ白な姿のままで。 「会いたくなったか?」 「いや、甘やかしたくなった」 「お前らしいな」 愛情を知らずに生きて来た澪をめちゃくちゃドロドロに甘やかしたくなった。 嘉音に今でも十二分に甘やかしてるでしょうが、なんて言われそうだけどな。 それでも構わない。 俺が死ぬまで、側にいられなくその時までいやと言われるまで愛してやりたい。 今はそれで十分だ。 「いつかお前にも分かるんじゃねーか?」 「いつかっていつだよ」 「俺が知るか」 諒もなんだかんだ舞桜の事愛してるしな。 扱いは雑だが、目は優しいから……見てるこっちがむず痒い。 たまには甘やかしてやれよってな。 まあ諒の事だ、たまには甘やかしてやってるんだろうよ。 くそイケメンめ。 あーくそっ。 今すぐ帰りてぇな……なんてな。 ー END ー [3/3] |