ワンライ企画 | ナノ





甘い甘いそれは蜜の味


「あの、さ……ちょっと言いづらいんだけど……」
「うん、なあに?」
「俺ってさ、やっぱ怖いのか?」
「どうして?」



ちらりと見上げると、明弘くんは少し苦しそうな顔をしていた。
社内の噂でも聞いたのかな?
噂されてるのかも微妙なところだけど。



「少し耳に挟んでな。で、どうだ?」
「そうね……明弘くんは昔から周りに人を寄せ付けないような所があったから、そういう雰囲気が怖いのかもね」
「そうか…………なんで昔の事を乙葉が知ってんだ?」
「ふふっ、内緒」



高校時代に一度だけ会ってることは絶対に内緒。
私だけの秘密なの。



「なんだよそれ」
「ふふっ……ねえ、ちょっと離してくれる?」
「あぁ……」



腕の中から解放された私は明弘くんの膝から降りると、少し離れた所に正座するとポンポンと腿を叩いた。
そんな私に明弘くんは首を傾げた。



「乙葉……?」
「旦那様の特権、でしょう? 嫁の膝枕」
「してくれるってか?」
「嫌なの?」
「そんな訳ないだろ」



試すように笑いかけると、明弘くんはニヤリと笑って私の膝の上に頭を乗せて寝転んだ。
あ、この眺め悪くないかも。



「どう? 嫁の膝枕は」
「悪くないな」



目を閉じて素っ気ない声で言う明弘くんだけど、口元が緩んでる。
言葉とは裏腹にってやつかな?
思ったよりも良かった、とか?



「素直じゃない人」



でも、そこが明弘くんのいいところだって私は知ってる。
強引だけど優しくて、強い人だけど本当は寂しがりで。
なんでも出来る人だけど本当は不器用なだけの旦那様。



「もっと甘えてきてもいいのよ、旦那様」
「乙葉もな」



そっと髪を梳くように撫でると、明弘くんはゆっくりと目を開けて私を見据えてきた。
真っ直ぐと、何もかもお見通しというような。

あーあ、やっぱり敵わないなぁ。
かっこいいよ……明弘くんは。
本当に。



ー END ー



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