ワンライ企画 | ナノ





甘い甘いそれは蜜の味


私がお風呂から上がって寝室に行くと、旦那様の明弘くんがベッドの上で座ってノートパソコンを弄りながら周りに仕事の資料を並べて仕事をしていた。

仕事熱心だな……
お父様とお母様がうるさいから仕方なくしているのは重々承知の上。
こういう時ぐらい休めばいいのに、ね。



「まだ仕事してるの?」



邪魔にならないようにベッドの端に座ってパソコンの画面に夢中な旦那様に声をかけると、明弘くんは私の方へと振り向いた。

あ、社長の顔してる……
もうあとは寝るだけなのに。



「出たのか」
「えぇ。それは……明日の仕事?」
「あぁ」



明弘くんはそう言うとまたパソコンに目を向けてパチパチと文字を打ち出した。
お父様とお母様がうるさいのは分かってるけど……少しぐらい休んでもいいのに。
休息は大事、なのよね。



「ねえ、明弘くん?」
「なんだ?」



私の呼びかけに文字を打つ手を止めずに応えてくれた明弘くん。
ふふ……これを言ったらどういう反応するのかな?
試してみよっ。



「仕事はそれぐらいにして、夫婦の時間を作ってみない?」



私がそう言うと、明弘くんはピタッと手を止めて少し目を見開いて私の方を見た。
あ、驚いた顔してる……珍しい。



「乙葉がそんな事を言うようになるなんてな……どういう風の吹きまわしだ?」
「なんだっていいでしょ? ねえ、どうするの?」



にこって笑って見つめると明弘くんは再びパソコンに向き直って少し操作すると閉じて周りを片付け始めた。
作戦成功、かな?

明弘くんは仕事の資料やパソコンをベッド脇のチェストに置くと、足早に戻ってきて私の腕を引いて寄せると自分の膝の上に私を乗せた。



「あの……これは?」
「夫婦の時間、するんだろ?」



明弘くんはそう言ってニヤリと笑った。
あー……ちょっとマズいかも。



「……なに、するの?」
「なにってそりゃ……キス、だろ」
「え、ちょっと待って!」
「待たねぇよ」



明弘くんは私の腰と後頭部を抑えると有無を言わせないと言うようにキスをしてきた。
甘く蕩ける……頭がぼうっとするようなキスだ。

このキスはいまだに慣れない。
それに、まだ怖い。
でも明弘くんはそんなの御構い無しに、私が蕩けるまでキスを止めてはくれないんだ。
相変わらず強引なんだから……



「なあ乙葉、聞いてくれるか?」
「……なに、を?」
「ちょっとした愚痴ってやつ」
「ふふっ……ええ、いいわよ」



キスの嵐から解放され、明弘くんの腕の中で息を整えているとそんなことを突然明弘くんが言いだしてきた。
今日はたくさん珍しい明弘くんを見れるな……
ちょっと嬉しいかも。






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