瞳に映る色
初夏の陽気を鬱陶しく感じている憐は柚稀と共に人気の少ない校舎の廊下の端で窓を開けて風に当たりながら授業をサボっていた。
気温はそこそこ高くて蒸し暑いのに風は冷たくて気持ちがよく、ぼーっとダラけるのにはいい天気だった。


「あーっ、動きたくねーっ」


そう声を上げると柚稀は壁を背に座り込み、隣でダルそうに窓の枠縁に頬杖ついてもたれかかってる憐を見上げた。

眠そうに開かれたシルバーの瞳に太陽の光が反射し、見る角度によって様々な色を映し出す不思議な目。
柚稀は憐のその目を見るのが好きだった。


「……さっきから何見てんだよ、気持ち悪りぃな」


視線に気づいた憐が柚稀の方へと振り向き怪訝な顔をする。
相変わらず眠いと機嫌悪いんだよなぁ、と柚稀は薄ら笑いを浮かべた。


「俺さ、多分憐は気付いてるだろうけど……憐のその光の角度によって色が変わる目が好きなんだよね」
「はあ?」


急になんなんだと言いたげな目を柚稀に向ける憐に、柚稀は更に言葉を続けた。


「青の時もあれば緑の時もあるし、紫になる事だってある。そんな不思議な目、見ててつまらないわけ無いだろ?」
「……頭大丈夫か?」
「大丈夫に決まってんだろ、アホか」


小馬鹿にしてくる憐の足を柚稀が叩くと、憐はずいっと顔を柚稀に近づけてまっすぐ目を見つめた。


「な、なんだよ」


ムカつくほど綺麗な顔が急に近づいて来て、柚稀は少し狼狽えた。


「俺は柚稀のその真っ黒で吸い込まれそうな目のが好きだけどな」
「は、はぁ?」


柚稀の間抜けた返事を聞くと、憐は満足そうにニヤリと笑って身体を起こし、また窓の外をダルそうに眺めた。


「ほんとお前のそーゆーとこ嫌い」
「そりゃ悪かったな」
「思ってねーくせに」


トン、と憐の足を軽く小突いた柚稀に憐は笑い、柚稀もそれにつられるように笑った。


「やっぱ俺、憐大好きだわ」
「そーかよ」
「あ、お前信じてねーだろ」


含み笑いをする憐に柚稀が突っかかり、授業終了を知らせるチャイムが鳴るまで柚稀と憐の小競り合いが続いたそうだ。
普段から緊張感のある生活をする憐達のそんな束の間の休息。


− END −


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