ロックオン


嫌われてるみたいだしどう助け出そうかと霧人が思考を巡らせていると、1人の生徒が近付いてきた。
チョコレートのような茶色い髪を横へ流し、格好良くキメた少年は霧人たち3人の側へと近付くと歩みを止めた。


「ナンパか?」
「違うよ。この学校広いから迷子になったみたいだったから道案内してあげようとしてたんだよ」


もう大丈夫みたいだけど、とそう続けて霧人は簡潔に経緯を茶髪の生徒……真島(まじま) 宏斗(ひろと)に話した。
それを聞いた宏斗は視線を霧人から顔一つ分背の低い嘉純と和泉に移した。

2人を見ていた嘉純はバチリと宏斗と目が合い、ビクリと肩を揺らすとサッと俯いた。
そんな嘉純にずっと抱きつきぐりぐりと甘えていた和泉は動きをピタリと止め、顔を上げてそこで初めて宏斗が加わり自分たちを見ている事に気が付いた。

じっと見つめ合う宏斗と和泉。
目があったその瞬間にお互いに何かを感じ取り、宏斗は獲物を見つけた獣の様に和泉を捉え、和泉はバクバクと心臓を高鳴らせながら頬を紅潮させていった。
お互いがお互いを一目惚れしたのだ。


「いず、み……?」


固まったまま動く気配のない和泉を心配そうに見つめる嘉純は、和泉の顔が赤くなっているのに気が付いた。


「っ、あ……なに?」
「顔赤いよ? だいじょーぶ?」
「ぅえっ、あ、だ、だいじょーぶ」


嘉純の言葉に我に返った和泉は、慌てて答えるとパタパタと顔を手で仰いだ。
そんな和泉を、嘉純は心配そうに見つめていた。

一方の宏斗と霧人は、2人を見ながら話していた。


「宏斗、目がマジだよ」
「あぁ、やっと見つけた」


和泉を捉えて離さない宏斗に対し、霧人はやれやれといった顔で今後を心配していた。
どうなる事やら、と。


「ねえ、和泉くん? 自分達の教室までの道は分かる?」


このままここに居るのもあれかと思い、霧人は迷子だった嘉純を探しに来た和泉にそう問いた。
パタパタと顔を仰いでいた和泉はピタリと止まると、また静かに威嚇をし始めた。


「めって言ったでしょ」
「あうっ」


そんな和泉を、嘉純はまた両頬をパチンと挟み込んでむにーっと摘んで引っ張った。


「ふじい先輩はいい人なの。だから睨んじゃめっ」
「ぅー……らってぇ……」
「だってじゃないっ」
「ぅー」


嘉純に叱られ、不貞腐れる和泉はいまだに嘉純に両頬を摘まれていた。


「こいつがいい人? ありえねーな」
「宏斗?」


嘉純の言葉に宏斗はありえないとケラケラ笑い、霧人はそんな宏斗にニコリと恐怖を覚えるような冷たさの笑顔を向けた。
ケラケラと笑う宏斗に、キョトンとした顔で見上げた嘉純と和泉はじっと宏斗の顔を見た。

2人に見られていることに気付いた宏斗は、どうした? と主に和泉に向けて聞いた。


「ひりょと……?」


嘉純に頬をつままれたままの和泉から発せられた言葉は、名前に対する疑問だった。
想像以上に可愛らしい質問をしてきた和泉に、宏斗のみならず霧人までもがその可愛さに悶えた。
そして霧人は、この子達は天使なのかと考えざるを得なかった。



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