熱い熱い、そして甘い。 俺は袋からプリンを取り出すとフタを剥がし、一口分スプーンですくうと和泉の顔に近づけた。 「和泉、プリン食べれるか?」 プリンと言う単語に反応は示したが、やっぱり首を横に振った和泉。 これは長期戦になるなと予想し、一旦プリンカップとスプーンを机に置くと俺はあやすように和泉の背中を撫でた。 「じゃあ何か飲むか?」 「いらな、ぃ」 「薬は?」 「……や、だ」 「そうか」 どーすっかなぁ…… 別にこのままでいいならそれでも構わないが、それだと和泉が苦しいんだよな…… 熱で体力も奪われてるわけだし、本当なら何か食べて欲しいんだがな。 かと言って、無理に食べさせるのは気が進まない。 今の状態だと泣きそうだしな……泣くと更に体力奪われるわけだし。 「プリンかお粥か薬ならどれがいい?」 「…………ぷり、ん……」 「ん、いい子。半分だけでいいからな」 俺は和泉を褒めるようにそっと撫でたらまたプリンカップを手にとって、スプーンですくったプリンを和泉の口元に近づけた。 すると和泉は小さな口を開けてプリンを食べた。 やっぱり、元気ないな。 「もうちょい食べるか?」 口の開きの小さい和泉に合わせて少しずつ掬って食べさせながらそう聞くと、和泉は怠そうにゆっくりと首を横に振ると顔を俺の首元に埋めた。 まあ、半分は食べられたから良しとするか。 俺は和泉の頭をそっと撫でながらプリンカップを机に置くと袋の中から風邪薬とスポドリを取り出した。 本当は薬飲む時は水が、もっと言うとぬるま湯がいいらしいけど、和泉を抱っこして飲ませるのも大変だから今はスポドリで妥協する。 きっと飲むのを嫌がるだろうし。 「ほら和泉、あーんして。薬飲んで」 「や……」 口元に錠剤を持っていくが和泉は口を固く閉ざして飲もうとはしてくれない。 まあ、こうなるだろうとは分かっていたがな。 俺は仕方なく強行手段を取ることにした。 自分で薬を口に放り込むととペットボトルのキャップを開けてスポドリを口に含んだ。 そして和泉の口にそっと指を入れて口を開けさせるとキスをしてそのまま口移しでスポドリと共に薬を飲ませた。 「ん、ケホッ……」 「もうちょい飲むか?」 「……ん、のむ」 「自分で飲む?」 「や……」 いやいやと首を横に振る和泉に、俺はまたスポドリを口に含んでキスして飲ませた。 和泉が満足するまで、な。 和泉が口移しを拒否すると俺はそのまま口に含んだスポドリを飲み、そっと和泉の背中をさすって寝かしつけるように撫でた。 「ひ、ろ……」 「ん?」 「どっ、か……いっちゃ、や……」 薬の副作用でうとうととしながら夢うつつで言葉を紡いだ和泉は、俺を離さんとするように服を握りしめてすやすやと腕の中で寝た。 あぁ、なんでこんなにも俺の嫁は可愛いのか。 大丈夫だぞ。 俺はお前を置いてはどこにもいかない。 何せ、俺には和泉が必要不可欠だからな。 俺は和泉がぐっすりと眠ったのを確認するとそっと起こさないように抱き上げて寝室に向かい、ゆっくりとベッドに寝かせた。 その時に、和泉の俺の服をしっかりと握りしめていた手が離れた。 深い眠りに入った証拠、だな。 しっかりと寒くないように首元まで布団をかけてあげると、俺はそっと顔にかかる髪をよけてあげて和泉の寝顔を眺めた。 薬のおかげか、穏やかな寝顔でほっと一安心。 起きて熱が下がって、少し元気になったら一緒にケーキ食おうな。 誕生日おめでとう、和泉。 Happy Birthday to Izumi!! ー END ー [4/4] |