熱い熱い、そして甘い。 グツグツと米を煮込んでいると、霧人から今から家に向かうとメッセージが届いた。 それに了解と返してスマホをカウンターに置くと、ペタペタと可愛らしい足音が聞こえてきた。 ふと顔をあげると、和泉が薄手の毛布を羽織って引きずりながらフラフラとした足取りで歩いてこちらに近づいてきた。 「和泉……起きたのか?」 俺の問いかけに答えない和泉を不思議に思いつつどうするのかと見守っていると、キッチンの入り口あたりに毛布を落としそのまま俺に抱きついてきた。 「和泉?」 「……だっ、こ」 「ん、ちょっと待ってな」 土鍋の火を止め、危なくないように奥の方へ移動させると、俺は和泉を抱き上げた。 すると和泉は全身で俺に巻きついてきた。 また寂しい思いをさせた、か。 まだいいと思っていたが……やっぱり眠りは浅かったな。 2度も起きた時に側に居てやれなかった。 「和泉、お粥食べれそうか?」 そう尋ねるとしがみついたまま首を横に振る和泉。 伝わってくる体温はまだまだ高い。 早く薬を飲ませた方がいいが……プリンを待つか。 もうすぐ霧人が来る頃だろうから仕方ねぇ、待つか。 そう考え、ソファに移動しながら途中で和泉が落とした毛布を拾ってソファに座り、肩にかけてやる。 熱っぽく荒い息を繰り返し、首元にはむはむと甘えてくる和泉の背中をポンポンと撫で、俺の中にいる獣な俺を必死に抑え込む。 和泉が元気だったら今すぐにでも襲っていそうで、こんな可愛い和泉がたまらなく愛おしい。 ………そういえば、何か忘れてる気がするんだよな。 すげー大切な何かを。 「ひ、ろ……」 「ん? どうした?」 「あたま、いたい……ガンガン、する」 「そうだよな……もうちょい我慢な。プリン買ってきて貰ってるから」 「……ん」 すりすりと甘えてくる和泉を撫でていると、チャイムが鳴った。 霧人が来た、か。 俺は毛布ごと和泉を抱き上げると玄関に向かい、扉を開けて霧人を迎え入れた。 「急に頼んで悪かったな」 「和泉くんが熱なんだから仕方ないよ。はいこれ、頼まれてたもの」 「ありがとな」 霧人からビニール袋を受け取ると、霧人の後ろに隠れていた和泉と双子の兄の嘉純がチラリと心配そうな顔を覗かせた。 「和泉……あの、だいじょー、ぶ?」 「んー、ぅ……」 「元気になったらまた来ようね、嘉純。あ、そうだ宏斗これ」 心配そうな顔をしてる嘉純の頭を撫でていた霧人が思い出したように小さめの持ち手のついた箱を差し出してきた。 ケーキ屋の箱っぽいけど……? 「これ……」 「今日、和泉くんの誕生日でしょ? 忘れてたなんて言わないよね?」 あぁ、そうか。 忘れてたわけではないが…… 「当たり前だろ」 「だよね。和泉くんが元気になったら一緒に食べて」 「悪いな」 「それじゃあ、俺たちはこれで。お大事にね、和泉くん」 「ばい、ばい」 「……ん」 2人を見送るとリビングに戻り、ケーキを冷蔵庫にしまったらソファに座ってビニール袋の中身を確認した。 プリンにスポーツドリンク、さらに風邪薬が入っていた。 さすが霧人。気が効くじゃないか。 [3/4] |