これが俺達のアイシカタ





戻った教室の中、そこには変わらず柳がいた。

中の異様な光景にも臆さずに幸村がずかずかと中に入っていくのを見て、二人きりには出来ないと赤也も扉をくぐる。


「蓮二」


そう呼んだ幸村の声に今まで背を向けていた柳が振り返った。
その口元はうっすらと赤みを帯びていて赤也は疑問を抱く。

口に入っていたものを飲み込んだのだろう、柳はこくりと咽喉を上下させてから「精市」と応えた。

その声に安堵の色を見つけて赤也は更に違和感を覚えたが、柳の背後に隠れていた皿を見てそれどころではなくなってしまう。


そこにあったものは、ジャッカルの頭部を開いたもの。その中身はぐちゃぐちゃと掻き混ぜられている。

ここにいてはいけない。そう思って逃げましょう!と腕を掴む赤也に幸村はこの場に相応しくない笑顔を向けてこう言った。


「大丈夫だよ赤也。蓮二は何時も通りじゃないか」


赤也は目の前が暗くなるのを感じたが、ここで気を失うわけにはいかない。
そう思って部屋から出ようとした時に後ろの扉が開く。
そこにいたのは見慣れた二人。


「切、原くんどうして…」


「何でここにおるんじゃ赤也…」


新たに加わった二人を見て、赤也は更に恐怖を感じた。
二人が持っていたお盆に乗っていたのは明らかに人の手であったからだ。


―そうだ、柳先輩は確かに俺"達"と言っていた


「あ…あ…や…っ」


すっかり腰を抜かしてしまった赤也に動揺している二人の声は届かない。

そんな赤也の肩にぽんと手が置かれた。


「ねえ赤也。赤也も俺達と一緒になろう?そしたらもう寂しいことなんてないよ。なあ、蓮二」


「そうだな、いい案だ」


耳元で囁かれた言葉の意味を理解して、ただ嫌々と頭を振る。こわいこわいこわい。
そんな感情だけが頭を支配していた。


「大丈夫赤也。怖くなんてないよ。お前の姿はちゃんと俺が残してあげる。一緒に生きよう?」


「いやだあああああああああああ!!」


赤也の目に熱が集まる。
充血した状態で腕を振り回し幸村の手から逃れると、入口にいた二人を突き飛ばして廊下に飛び出した。

がシャン!という音が後ろから聞こえてきたが、赤也は振り返らずに今度こそ学校から出ようと廊下を駆け抜ける。

そんな時、前から歩いてくる人影を見つけて赤也は立ち止まった。


恐らくレギュラーに出会えば自分の命は無い。

何処か隠れる場所をと探して教室の扉に手をかけると思いの外容易くそれは開いた。鍵がかかっていなかったのだ。

赤也は慌ててその部屋に滑り込んだ。

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