冗談みたいな現実 その後、俺は課題を柳先輩に見てもらいながらぱっぱと終わらせ帰路についた。 辺りはうっすらと闇が深くなっていたが、まだ近くにある公園の中からは子供の声が聞こえてきている。 会話のない2人の間にその声だけが響いた。ふと、隣を歩いていた柳先輩が足を止めたので俺もそれに続く。 「先輩?」 「…お前は、」 そこまで言って柳先輩は言葉を止めた。何なのかとは首を傾げたが、それも彼の「何でもない」と言う言葉で無駄な行為に終わる。 柳先輩が言葉を濁すなんて珍しい。 それを不思議に感じたが自分にはそれを追求する理由も通りも無いのでそのまま流した。 そんな俺に先輩は再度何か言おうとしたが、結局何も言葉を交わさぬまま2人は別れ道で別れる。 別れ際に見た柳先輩の寂しげな顔が嫌に俺の頭に残った。 「(…先輩の様子が可笑しい)」 1人になった帰り道。俺は頭を悩ませる。 それは先程の柳先輩の振る舞いだったり、いつの間にか進んでいた時間についてだ。 あまりにも不可思議な事の連続に俺は戸惑っていた。 消えてしまった教師とクラスメート、進んだ時間、様子の可笑しい先輩。 ずらりと並べてみても共通点なんて見つけられず、気がつけば家についてしまっていた。 玄関の扉を開けて「ただいま」と声を荒げつつ自分の部屋に向かう。 朝と変わらぬ家の様子に安堵しながら部屋に入ればそこにも変わらぬ光景が広がっていた。 まあこれが普通なのだろうが、先に挙げたような現象を体験してしまうと例え自分の家だとしても警戒心を持ってしまうのは仕方のないことだろう。 ほっと一息つき部屋を見渡す。 そして部屋のある一点を見たとき、俺は目を見開いた。 部屋の隅に置いてある勉強机の上。そこには自分の知らない物が置かれていたのだ。 それは自分が全く身に覚えのない写真。 「何だ、これ…」 写真に収まっているのはどう見ても柳先輩と自分だった。 それもごく最近撮られたもののようだ。カレンダーに目をやれば写真に刻まれている日付から1ヶ月も経っていなかった。 カレンダーの日付は、教室で授業を受けていた時と全く同じである。 つまりここは俺がいたところと全く同じ時間軸の上にあるということだ。 多少の時間差はあるが日付も年も同じである。 「もしかしてこれがパラレルワールドってやつか…?」 そう自分で呟きつつも、赤也は「そんなばかな」と頭を振ったのだった。 |