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あなたの言う、幸せの夢


雲の行き先。
季節の変わり目。
ボールが跳ねて、草原に落ちる。
何処までも、何時も通り。
夢の続きは、見れない事が多い。
川がながれて、魚が泳ぐ。
自転車のペダルが金属質な音を上げる。
漕ぐたびに、小さくなる。
隣で手押しされた、意味をなさない自転車。
黒い髪にとけるように其処にある黒い帽子。
何時も通りの優しい声色に、目を細める。
風が吹き、髪をさらう。
何もかも、変わらない。


其れがつまらないと感じるだろうか。
否、怖いばかりだ。

其れが何時まで続くのか。
其れが何時まで、自分を待っていてくれるのか。
何時か、全部もって行かれてしまう。
夢の続きは、見れない事が多い。
見れたとしても、前を忘れてしまった夢は、始まりばかりである。
何処までも、何処までも続くばかりで、不安要素を落とす。
俺は此処にいるのに、何もなかったことにされるのだ。


手を伸ばす。
優しい手が俺の手のひらを掴んだ。
温かい、手のひらだ。
それだけでよかった。
其れでよかった。
多くは望まない。
望んではいけないのだ。
もう十分だ。
十分だ。
手のひらは優しく俺の頭を撫ぜて言うのだ。


いいんだよ、俺は蓮二を愛しているのだから。
愛していれば、我儘なんてない。
これはな、お願いって言うんだ。
其れは、叶えようと叶えずとも俺次第。
俺はな、蓮二。
何だって、叶えたいのだ。


そんな事は、俺とて同じ。
同じなんだ。
嗚呼、嗚呼!
酷い奴だ、酷い、酷い。
だってそれじゃぁ、俺は可笑しくなってしまう。
なってしまえって、笑うんだ。
意地悪なんだ。


お前のせいで俺は少しだけ泣いて、明日のお前に嘘をつくのだ。




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