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あなたの言う、幸せの夢


「知っている?」


幸村は楽しそうに俺の顔に向けていった。
俺は小首を傾げて、面白そうな話題に笑う。

「知らない。」

話を聞いていないのに、俺は言う。
幸村は満足げに笑って、頷いた。
「この本に書いてあったんだけれどね、」
其れは最近女子が読んでいる本だ。
どうやら女子の中で人気になっているらしい。
「両思いの人間の過去に飛べるおまじないだってさ。」
「ほぉ。」
俺が興味深げに言う。
「真田と柳ならできるはずだけれど、霊感がないと出来ないそうだから、柳がやって。」
柳って、霊感ありそうだからね、と悪びれもせずに幸村は言う。
少し前に、霊感がある人って何だか不気味だねぇ、と心霊特集を見ながら言っていたその口で、だ。
俺は少し面白くなって笑う。
歯に衣着せぬ言い方をする幸村は、好きだ。
変なお世辞ばかりで、何も教えてくれない人間よりも好感が持てる。
本を渡してきた幸村から本を持つ。
「きっと、できっこないさ。」
俺が笑うと、幸村は妙に優しく笑って言った。
「多分きっと、できるさ。」
それだけで出来るように思わせてしまう幸村は、やはり神の子だ、と俺は感心した。
俺もつられて笑う。
幸村は悪戯っ子のような顔で、ふふふ、と笑う。
「俺、柳のその顔好き。 真田も好きだと言ってたし、あいつは案外見る目があるよね。」
何故だかご機嫌な幸村にそういわれ、俺は困った顔をしたはずだ。


「困った、な。」


実際にそう言ったのだから、間違いない。



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