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あなたの言う、幸せの夢


目覚ましの音で覚醒する。
恐る恐る足をつくと、普通にベッドから降りられた。
息をつき、本を掴んだ。
材料と、手順だけ書かれた本。
どういうものかが書いていないのはそのページだけだった。
精市め、俺を騙したな。
何と無くそれだけは分かって、俺は息をつく。
そして欠伸を一つして洗面所に行った。
何時も通りの自分が映った。
中学に上がって、弦一郎にあった。
一緒にテニスの練習をする事になって、あのお気に入りの服を着た。
その時は気に入っていない。
そして不意に練習前に弦一郎が言った。


その服、よく似合っている。


成程思い出した。
昨日の事があってから、やたらとクリーンな昔の記憶に少し困った。
後で精市をとっちめてやろう。
そう思いながら柳は学校に向かった。


朝練の為に早くから来ている弦一郎にあった。
弦一郎は俺の隣に来るために自転車を降りた。
弦一郎はこっちの道を通らなくても学校に行ける。
こっちは回り道で、歩いていたら朝練に間に合わない。
だから自転車で来る。
俺を見ると、何時も降りる。
俺と一緒に歩けば、時間には間に合う。
微妙に遠い、距離。
「おはよう、蓮二。」
「おはよう、弦一郎。」
俺は弦一郎に言う。
弦一郎は何故だか朝から上機嫌で、俺の顔を見て笑った。
俺は弦一郎に言う。
「お前、俺に嘘ついたろう?」
弦一郎は少し驚いた顔をして、困ったように頭をかいた。
「本当は、俺のこと、知っていたろう?」
俺が続けて言うと、弦一郎は、参ったな、と笑う。
おれは笑って弦一郎に言った。
「馬鹿な弦一郎、俺はお前の事など前からわかっている。」
「本当か?」
「わかっているさ、お前は馬鹿だから、嫌いだ。」
「俺は愛しているよ。」
「知ってるよ。」
俺は多分、困った顔で笑ってる。
弦一郎は少し間を置いて、天邪鬼だな、と眉尻を下げて笑った。


「蓮二に、だけさ。」


何に対してか、わからない。
たまにこうやって、主語を抜く弦一郎はズルイ。
だから俺は、何もわかっていやしないのに、言うのだ。


「知ってる。」


少しだけ嘘を吐いて、お前を見返してやりたいのだ。


とりあえず、精市の練習メニューを弄ってやろうと思う。


それと、弦一郎の練習メニューも。


俺は少しだけ楽をして、其れで許してあげよう。


俺って、優しいな。

END


憧れの千疾さまより相互記念に頂いてきました…!
おおおもう夢ではないだろうか、いまだに現実味ないんですが…!こんな素敵真柳小説頂けるなんてあわわ///
千疾さま本当にありがとうございます…!>///<
これからもよろしくしてやってください好きです!


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