[6/7 ]

あなたの言う、幸せの夢


「両思いならば出来るおまじない?」
「そう。」
幸村は笑って真田に言う。
「くだらん。」
「そういって、気になるくせに。」
真田はムス、とした顔をする。
「柳にしてって頼んだよ。」
「蓮二に?」
「きっと、上手く行くよ。」
「いったらどうなる。」
「二人とも過去に飛ばされる。」
幸村は悪戯っ子の顔で言う。
「何ページか破ったんだ。」
「破る?」
「ばれないように、巧妙に。」
柳にはばれないようにね、と幸村は笑う。
真田は呆れた顔をする。
「過去に飛ばされるのは愛している方だけ。」
「愛しているほう?」
「そう。」
幸村は笑って言う。
「運がよければ、過去で一緒に会えるよ。」
真田は何か考えているようだった。
幸村は真田に言う。
「収拾がつかなくなるから、真田は何も知らない振りして一日何時も通りに過ごすんだよ。」
幸村は笑う。
何と無く、幸村が言わんとしている事がわかった。
「信じているなら、待つ事もまた、という事だな。」
「きっと、上手く行くよ。」
「そうだと、いいな。」
「ばれないようにしなよ。」
「何故?」
「相手にばれた瞬間、こっちに戻っちゃう。」
すぐに戻ったら、つまらないだろう?、と幸村は笑った。

恋人が両思いならば、愛している方が引っ張られるように過去に戻る。
行った方にばれたら、おまじないは効力を失う。
逆に、ばれなければ一生、夢をさまようんだ、と。
幸村は物騒な事を言って笑った。



prev next


back