[2/2 ] 未来と今と 感じていた肌寒さがやわらいだ気がした。 寒さがやわらいだ、というよりも守られたと言った方が正しいのかもしれない。 それというのも、先程までは少し寒かったというのに、今自分が温かさを感じているからだ。 ゆっくりと重たい目蓋を持ち上げる。 一体どれくらいの間自分は寝ていたのだろうか。出来ればまだ昼休みであってほしい。 開けた目に先程までは確かになかった姿が映り込む。 何でこの人がここに? サラサラの髪が重力に従って流れている。 しっかりと閉じられた目は長い睫毛に覆われていて、その姿はまるで綺麗な日本人形のようだ。 聞こえて来る寝息で彼がちゃんと生きている事を知った。 「…柳先輩」 小さく名前を呼んでも、柳先輩が起きる気配は無い。 普段ならすぐに目を覚ましてくれる彼が起きない事に、余程疲れている事がわかった。 ゆっくりと身体を起こす。 それと同時にぱさりと落ちる何か。 それは自分より少し大きめのブレザーだった。 隣で眠っている柳先輩へと再度目を向ければ彼がブレザーを着ていない事に気がついた。 温かさの原因は柳先輩だったようだ。 しかしこれでは柳先輩が風邪をひいてしまう。 いくら温暖化やら何やらで通常の秋より暖かいとはいえ、それでも最近は冷え込むことも多くなっているのだ。 俺が原因で柳先輩が風邪をひいただなんて冗談じゃない。 そう考えて、自分に掛けられていたブレザーを先輩の上に掛け直す。 その上から更に俺のブレザーも掛けておいた。 これで柳先輩が風邪をひいてしまうことは無いだろう。二重に重ねられたブレザーを纏っている先輩を見て心が少し満たされるのを感じた。 「…ん、」 ごそごそと身動ぐ柳先輩。 そんな先輩の手を自分の手で包みこんだ。 「あか、や…?」 「おはようございます、柳先輩」 覚醒したのか少し擦れた声で俺の名前を呼ぶ柳先輩が愛しい。 俺を琥珀色の瞳に映した先輩は嬉しそうに「おはよう」と笑った。 「…どうやらすっかり眠ってしまったようだ」 「柳先輩でもそういうことあるんスね!」 「……………」 「いひゃいいひゃい…!やにゃぎしゃんごめんなひゃい…!」 「わかればよろしい」 引っ張られた頬がひりひりする。柳先輩って変なところで容赦無いよな。 「誰が容赦無いって?」 「すいません、心読まないで下さい」 時々この人はエスパーなのではないだろうかと思う。 素早く謝罪した俺を柳先輩はクスリと笑った。 「そういや話し合いは終わったんスか?」 今日は昼休みを過ごす事は出来ないと思っていたので不思議に感じてそう訊ねる。 「ああ、そんなにかからなかったんだ。直ぐに終わったよ」 「へー」 柳先輩が恐らく寝る前に食べ終わっていたであろう弁当箱を持つ。 腕にある時計はそろそろ昼休みが終わる時間を指していた。 自分で聞いておきながら興味なさげに流した俺を柳先輩はじっと見つめる。 「……俺も寂しいよ」 何がとは先輩は言わなかった。 けれどもそれが何かなんて分かっている。卒業後の話だ。 「柳先輩…」 「でも、大丈夫だ」 ふわりと笑う柳先輩。 先輩は俺の手をぎゅっと握りしめた。 「変わらないよ」 柳先輩に言われると不思議と大丈夫な気がしてくる。 「へへっ、そうっスね!」 握られた手を握り返す。 「浮気とかしちゃダメっスからねー」 冗談っぽく言えば「お前もな」と笑われてしまう。 「当然っスよ!」と自信満々に返して、俺達は笑いあった。 確かに1年は長いけれど、どうかそんな1年がいつか「そんな時もあったな」と思い出せばこんな風に笑いあえる1年になりますように。 しょこさまお待たせしました! いちゃらぶ幸せな赤柳になってます…かね…? 赤柳いちゃいちゃさせたくて逸れまくった気がしなくも無いですが私なりに頑張ってみました…! 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。 よろしければ受け取ってやってくださいね! 本当に相互ありがとうございました!これからも宜しくお願いしますねしょこさま好きです^▽^ ご本人さまのみお持ち帰り・苦情受け付けております H23.11.7 back |