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旅行に行こうか


俺と赤也が部屋に戻れば、既に夕食の準備が整っていた。

「あ、2人ともおかえりー」

俺と赤也の姿を見つけた浴衣姿の精市がひらひらと手を振る。それに手を振り返すことで返事をした。

「ただいまっす!なんかいい匂いしますねー」

クンクンと犬のように鼻を動かす赤也。そんな赤也が面白かったのだろう。精市は笑いながら「もうすぐご飯だからね」と言った。

「わー!楽しみっす!」

目をキラキラとさせているように見えるのはきっと俺の気のせいではない。そんな赤也を眺めながらも「おや?」と首を傾げる。俺に気付いた精市は「ああ」と言った後、

「真田ならお風呂だよ」

と続けた。なるほど、先程から気になっていた浴衣の理由は2人で先に温泉に行ったかららしい。弦一郎は長風呂だから先に出てきたのだろう。

「えー!先に入っちゃったんすか?!」

それを聞いた赤也が声を上げた。

「ここの温泉は素晴らしいって書いてあったからね、山が一望できて綺麗だったよ」

「ずりー…」

赤也の言葉に精市は「残念だったね」とケラケラと笑う。わいわいと楽しそうな2人を一先ず置いておいて、俺はテーブルの前に座った。人数分の食器が用意されていて、メイン用の鍋はいい具合にグツグツとしている。
後は具材を宿の人が持ってくるだけという感じだ。
まだ、あーだこーだとじゃれている2人。飽きないものだと眺めていれば部屋の扉が開いた。どうやら長風呂から戻ってきたようだ。


「む?帰っていたのか」

「あ、おかえり真田」

赤也と俺を見てそう言った弦一郎に返事をしたのは赤也の頬を引っ張っている精市だ。
何をしとるんだと呆れる弦一郎に俺も手を上げることでおかえりと伝える。

まだ2人のじゃれあいは続いていたが、それも具材や料理が運ばれてくるまでのことだった。流石食べ盛りとでも言うべきか。
鍋に入れては食べ入れては食べ。共に用意されていた刺身はすぐに売り切れ皿の上には千切り大根が寂しく盛られているだけだ。小鉢なども同様で皿の中は既に空っぽで。
俺は隣の赤也の様子を見つつ食事を進めていた。皿に用意されているものはいいが鍋だと加減が分からないからだ。
出来ていそうなものを小皿に乗せてやればそれを赤也が口に運ぶ。実に器用なことだ。

そんなこんなしていれば、夕食はあっという間に終わってしまったのだった。


to be contened

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あまりにも長くなったので切りました。
次回も旅行編です。

H26.05.08



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