初デートでGO!

―数日後。

俺は幸村部長の病室を訪れていた。

言わずもがな、アドバイスのお礼を言うためだ。

嬉々とした表情で病室の扉を開けた俺に「ああ、赤也いらっしゃい」という声が届く。
幸村部長は今まで本を読んでいたらしい。

「その様子だと上手くいったのかな?」

「はい!部長のアドバイスのお陰っスよ!ありがとうございました!」

俺は上機嫌でそう返す。
案の定あの翌日は柳先輩から怒られたが、怒っている内容が内容なので幸せなものでしかなかった。

俺の返事を聞いた幸村部長は「それは良かった」と笑う。

「ああ、でもね」

「はい?」

意味深に続けられた言葉にまだ何かあるのかと首を傾げた。

「あれ、実は俺が真田に相談して貰った物なんだ。だから礼なら真田に言ってやってくれないかい?」

「真田副部長が?!」

自分の耳を疑う。
まさか真田副部長にあんな的確なアドバイスが出来るとは。意外というかもう驚愕物である。

しかし幸村部長が言うなら事実なのだろうと、翌日俺は真田副部長のクラスを訪れた。

…廊下を走ったせいで風紀委員である先輩方に睨まれたが、まずは礼が先だろう。

「あの、真田副部長あのアドバイスありがとうございました!」

一瞬何の事か分からないと言うような顔をした副部長だったが直ぐに察したようで「あれのことか」と頷く。

「幸村の言っていたのはお前だったのだな。しかし、あれは俺が蓮二に相談して貰った物なのだ。礼なら蓮二に言ってくれ」

「……は?」

今副部長は何と言っただろうか。え?何?誰に相談したって?

「赤也?こら、赤也どうしたと言うのだ!」

固まってしまった俺の肩を副部長が揺らしている。
この人が柳先輩に相談したってことは、つまり―。

俺は目頭が熱くなるのを感じた。

「ああああ先輩のばかあああああああ」

いきなり泣き始めた俺を見て真田副部長も柳生先輩もぎょっとしていたが俺が泣き止む事はなかった。


初デートは成功したが、全てリードしてくれたのはあの人だったのだ。

恋愛の厳しさを知った切原赤也13歳の夏。

END

赤也どんまい!
この後赤也は柳さんに慰めてもらいます

赤「柳さ…っ、ふええ…」

柳「よしよし(弦一郎の無自覚は本当に質が悪いな…)」

的な感じで


H23.10.14


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