ただその言葉を ※付き合ってる塚柳塚 いつもは遠く離れて滅多に会うことも出来ない人物が目の前にいる。 普段なら、来るときには連絡を必ず入れるような相手であるだけに多少戸惑いを覚えた。 「どうしたんだ。こんな所まで来るなんて珍しいな、柳」 こんな所とは青春学園である。 普通に授業を終え部活も終わり帰ろうとした所で校門に見知った姿を見つけたのだ。…考えてもみれば、神奈川からここまで大分距離があるが部活はどうしたのだろうか。 「手塚、良かった。あまりにも遅いからもう帰ったのかと考えていた所だ」 「? 俺に用事か?」 尋ねた質問には一切答えを返して貰えなかったが、この言い様はそうとしか取れない。しかし約束をしていた記憶も彼がここにわざわざ来る程の心当たりもなかった。 俺の言葉を聞いて、柳が眉間に皺を寄せる。 「…本当に自分のことになると頓着がないのだな」 はあと呆れ顔で溜息まで疲れてしまった。 それを黙って見守る俺に彼も折れたらしく小さな紙袋を目の前に突き出される。これは何なのだろうか。 「お誕生日おめでとう」 落ち着いた声が音を紡ぐ。 はてと考え、今日が何日かということを理解して俺はやっとこの状況を把握する事が出来た。 つまり、だ。 「わざわざその為にここまで?」 彼も忙しいだろうに。 ただ無言で頷く柳の手を引いて、俺はそのまま自宅へと向かったのだった。 手塚誕生日記念に日記へ載せたもの H23.10.11 back |