ピアス

※真田さんがヤンデレ気味


全部全部、アレの全てを手に入れる事が出来ればと思った。
そんなこと出来るはずも無いのだけれど。それでも諦めることなど出来なくて。

そして俺はある1つの方法を思いついた。






「弦一郎?何だというんだ。急に呼び出して」

部の方が珍しく休みであった日曜日。
日も傾いた頃、「今、大丈夫だろうか」と連絡をとった俺に二つ返事で頷いた蓮二は今俺の家の玄関先で首を傾げている。

「外では何だろう、まあ入れ」

そんな様子の彼の背中を押して、半ば強引に中へ招き込んだ。
はじめは驚きからか少し抵抗した蓮二も、玄関まで入れてやると案外素直に「お邪魔します」と上がっていた。それに気分をよくして同じように続く。
長い廊下を通り部屋に通せば安心したように蓮二は畳に腰を下ろした。
聞けば俺以外の家人に会うのは少し緊張するということらしい。蓮二が俺の家に来るのは初めてではない、むしろ回数で言えば多い方なのだがこれはもう元々の人見知りという性格のせいなのだろう。
よほど仲の良い者以外は知らないであろう事実に頬が緩む。
普段の大人びた雰囲気からは想像出来ない可愛らしい性格がとても愛しい。

「少し待っていろ、茶を持ってくる」

「長居するわけではないから別に構わんぞ?」

「そうはいかん」

遠慮する蓮二にもう一度待っていろと伝え台所へ向かう。
2人分の湯呑に加え茶菓子を添えた後、ある箱を掴み部屋へと戻った。
変わらず畳に座り、持ってきていたのであろう本に目を落としていた蓮二は襖の開く音を聞いて「ありがとう」と顔を上げる。

「いい饅頭を貰ったんだ」

そうかと俺の言葉に頷きながら湯呑に口をつけた蓮二はほっと一息つくと「で?急にどうしたんだ?」と笑った。

…こんな1つ1つの表情も含めて自分のものにしたい

そんな俺のどす黒い感情も知らないで首を傾げる相手に1つの箱を見せる。
蓮二はそれを受け取り眺めた後俺の方を見た。
恐らくこれをどうすればいいのかと言いたいのであろう。「開けてみろ」と言えば蓮二は少し困ったような顔をしながらその蓋を持ち上げる。中に入っていた小さな石がはめ込まれているそれを見て見開く瞳に堪えきれない笑いが漏れた。

「…弦一郎。何だこれは、」

箱の中に綺麗に納まっているのは赤い宝石の入ったピアス。
眉をひそめた彼に俺はしっかり言ってやった、プレゼントだ と。

蓮二が耳にピアス穴を開けていない事など元より承知だ。
それを知っていてわざわざこれを選んで来たのだから。

「これを付けていれば、周りにも蓮二が誰のものか分かるだろう?」

「何、を…」

じりっと近付きながらそう伝えれば、同時に後退する蓮二。
ここから逃げる事など出来る訳がないのに。
その姿が小動物を連想させて俺は更に笑みを深くした。

「怯える事はない。痛みなど一瞬なのだから」

そう言って蓮二が後退った事により近くなった棚の一番下から買っておいたピアッサーを取り出す。

動けないように身体を固定して耳にピアッサーを挟み込んだ。
ゆっくり力を込める瞬間、自由な逆側の耳へ「愛している」と囁けば、蓮二が息をのむ音が聞こえた。

END


ピアスなんて開けた事ないからいまいち表現がわかりませんね、何故書いた。

H23.09.28

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