ぬくもり

土曜日、部活が終わった夕方。
空を見上げれば、ふわふわと落ちてくる白いものが目に入った。

今年初めてのそれに、自然と気持ちが高鳴る。


「柳さん柳さん!雪っスよ雪!」


先程、俺が出てきたスポーツショップの自動ドアを振り返りながらそう告げれば、同じように店から出てきた柳さんが空を仰ぎながら小さく笑った。


「ああ、本当だな。予報では確率は低いと言っていたが…」

「予報なんてどうでもいいっス!そんなことより雪っスよ!」


ぴょんぴょんとアスファルトの上を跳ねながら興奮を伝える。跳ねた反動で巻いていたマフラーがずれてきたが対して気にはならなかった。
そんな俺に眉を下げ困ったように微笑んだ柳さんは「余りはしゃぐと転ぶぞ」と俺のマフラーを巻き直してくれる。
何だか子供扱いをされたようで少しムッとしたが、何時もより近い距離に更に頬が緩むのがわかった。


「どうした?赤也」


案の定変に思われたのだろう、首を傾げた柳さんに「何もないっス」と返す。

吐く息が白い。
普段から余り表情を表に出さない柳さんの耳が赤く染まっている。
それが何だか可愛く思われて、そっと背伸びして柳さんの耳へと手を伸ばした。
冷たい耳を手で包むとビクリと揺れる柳さんの身体。こしょばかったのだろうか。それでも俺の手の体温の方が高かったので気持ちいいのだろう、柳さんは自らの手を俺の手に重ねた。
俺よりも少し冷たい手の温度。


「……温かいな」


呟くように柳さんはぽつりとそう零した。
それにつられるように柳さんの顔を覗き込めば、幸せそうに笑みを堪える表情が瞳に映り込んだ。


「そうっスね」


ただそれだけ返してにこりと笑う。

雪の欠片が少し大きくなった。この調子なら、もしかすると積もるかもしれない。


「柳さん、積もったら先輩達もよんで雪合戦でもしましょうよ」

「それもいいな……しかし」

「はい?」

「お前と2人、炬燵でのんびり…というのも捨てがたいな」

「!」


柳さんの台詞に目を見開く。いつの間にか離れていた手がわたわたと忙しなく動いた。柳さんと炬燵でのんびりだなんて幸せ過ぎる。
あわあわと唇をただ動かす俺を見て「どうだろうか?」なんてふっと笑う柳さん。

俺の答えなんて知ってるくせに。


「そんなの大賛成っスよ!」


俺の勢いのいい返事を聞いた柳さんは、満足そうに微笑んで「なら今からでも俺の家にでも来るか?」なんて誘惑をしてくるのだからなんて性質の悪い人なのだろう。

まあ俺はそんなアンタに夢中なんですけどね!

目を輝かせながら大きく頷いた俺は早く帰りましょう!と、柳さんの手を引いて帰路についた。

帰り道、繋いだままの手が嬉しくて俺が終始にやけっぱなしだったのは仕方ないだろう。

END


ひたすらいちゃいちゃさせたくて書いたらこうなりました

H24.01.05


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