さよなら私の日常 | ナノ

まさに王道展開
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もともと単調な作業というものは苦手で直ぐに飽きが来てしまう実里にとってマネージャーの仕事言うものはつまらない作業以外の何物でもなかった。
それ故に少しやっては壁打ち、少しやっては筋トレというお前は本当にサーポートをする気があるのかという行動を取ってしまっている。他のマネージャーさんに悪いと思いつつも飽きると作業効率まで下がってしまうので気分転換は欠かせなかった。

少しでも力になれればと部活終わりに明日の準備とその日に終わらなかった片付け等をしていたがやはりそれだけでは他のマネージャーの受け持っている仕事量には足りない。

それでも一応仕事をしようという心意気はあるのだ。これは信じてもらいたい。
しかし日頃の行いは本当に大事だと思った。もし実里が今までサボりもせず真面目にマネージャー業だけしていればこんな所に呼び出される事なんてなかっただろう。

そう、お察しの通り。
ただいまベタな校舎裏でいかにもな女子数名に取り囲まれております。
こんな頭良さそうな学校にこんな化粧ばりばりな生徒がいるなんて知りたくなかった。

「あんたホント舐めてんでしょう?ええ?」

「何とか言ったらどうなの?」

「ちょっと仁王くんに気に入られてるからって調子にのんの止めてくんない?」

次々に投げかけられる罵倒を右から右へ跳ね返す。
こんな意味も無い言葉達なんて脳を通す必要も無いだろう。
彼女達が飽きるまで黙っていようと思っていた実里だったが、目の前にいた女子に胸倉を掴まれたことによってそれも叶わなくなってしまった。

え、あの暴力はいけないと思うよ。口だけにしようよ口だけに。

流石に身の危険を感じた実里は「まあまあ」と女子達をなだめた。
そんなことで彼女達が黙ってくれるとは思っていなかったが、少しは落ち着いてくれるかもしれないという考えからの行動だ。

実里が思った通り、彼女達は此方の言葉を聞いてくれた。
…案外優しい子達なんじゃないのか?

「言いたい事はよーくわかります。けど私もラリーできなくなんのは辛いから今の生活を止める事はできません」

実里の言葉に「舐めてんのか?!」と口調を荒げた人がいたが、それを手で抑制しながら続ける。

「そこで1つ提案です」

これなーんだ、と彼女達の前に紙切れを出せば彼女らの眼の色が変わった。
紙切れにはレギュラーの写真が印刷されている。
あ、断っておくと盗撮ではないんで。ちゃんと試合前に許可は取ってあるから問題ない。
まあ取れなかった人もいるから全員分はないけれど、それでも彼女達には十分だろう。

その証拠に今まで文句を言っていたのが静かになっている。

…こんな簡単でいいのかファンクラブ…。

たった数枚の写真で黙ってくれそうな彼女達を見て逆にこちらが心配してしまった。
しかし自分のためにも止めるわけにはいかないと、その写真と引き換えにラリー権を取得したのだった。

これでファンクラブに文句を言われる事なく存分に打ち合えるだろう。
勿論仕事もだ。

これで暫くは普通の生活を送れるとスキップで教室に戻った実里だったが、まさかのこの様子を丸井に見られていたらしく、見事写真達を真田に没収されたのだった。


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