ありふれてる大切なこと





先輩達が中学校を卒業して1ケ月が過ぎた。
卒業前にはずっと駄々を捏ねていたものだけど、案外人には適応能力があるらしい。慣れとは怖いもので、俺はしっかりと″部長″をしていた。
新入生も例年と同じくらい入り、もうすぐ始まる新人戦に向け日々練習に励んでいる。
立海大に入ってくるだけはあって一年生とはいえ多少の実力があるものがほとんどだった。叩けば叩くほど伸びそうな者も多い。
そういった奴は例外なくどこか生意気だった。きっと、自分の実力に自信があるのだろう。そんな後輩達に、かつての自分を重ねた。
俺が入ってきた時、先輩達もこんな気持ちだったのだろうか。
まだ2年ほどしか経っていない過去。しかしなぜだか遠い昔のように感じた。
それはきっと、この2年が濃すぎたせいだ。
期間にすれば2年。しかし体感はもっと長かった。それこそ2年しか経っていないのかとすら感じるほど。

「切原部長ー!」

かつて幸村部長がいた立ち位置に自分はいる。
後輩達への期待と、自分が目指している一点へ導かなければという責任感。
1年前は目立っていなかった同級生も、今では俺と肩を並べるプレイヤーだ。
そう、共に頂点を目指すチームメイトなのである。
確かに、先輩達がいなくなったらどうやって立海をまとめていけばいいんだと不安もあった。自分には、それをするだけの力量があるのかと。しかし、そんなのは杞憂に過ぎなかったのだ。
同じでなくていいと教えてくれたのは今の仲間。
引継ぎ後、幸村部長のように出来ないとイライラしていた俺に「お前のやり方でいいんだよ」と同級生は笑った。部長だからって1人で背負わなくていいんだと、そう言ってくれたのも仲間。

先輩達のようには出来ていないかもしれない。だけれど、今のチームもいいチームだと俺は思う。今のこのチームが、今年の立海大附属中なのだ。俺は、誇りを持ってそう言える。

「今年は王者奪還!んでもってまた王者立海の時代を築く!先輩達をあっと言わせてやるぜ!」

「切原部長今日も気合い入ってるでヤンス〜」

「とーぜん!」

高校に上がっても、定期的にOLは顔を出してくれる。出来るならば、夏終わりのトロフィーを見てあっと言ってもらいたいものだがいつ見られても恥ずかしくないようにせねば。
立海も俺自身もまだまだ伸びる。
強くなって、強くなって、見返してやりたい。追いついて追い越して行きたい。

絶えることを知らない向上心。
それを武器に、俺たちは今年も全国制覇を目指す。

それにはまず目前の地区予選だと、赤也はテニスコートに響くほどの声をあげた。

「常勝立海!!」

END


諦めない心と、満足しない強さ
そして大切なものは身近にあるよってことを詰め込んだら収拾がつかなくなりましt

H26.05.12

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