久々に見た部室の扉を開いた俺の耳にまず最初に入ってきたものはクラッカーの音と紙吹雪きだった。
突然の事にきょとんとしていると、赤也が「部長ー!」と飛び付いて来る。
その衝撃でやっと、自分の退院祝いなのだということを理解した。奥の壁にぶら下がっている布にはしっかり真田独特の字で「祝 幸村退院!」と書かれている。
「「お帰りなさい!」」
部室にいたレギュラーにそう伝えられた時に、退院した時には感じなかった「帰って来た」という実感があった。
帰って来ることが出来たのだ、ここに。
一度は絶望したこともあったけれど。それでも俺はここにいる。
そこにいる面々の顔を順番に見ていく。
俺が留守の間にいつも以上に頑張ってくれていたみんな。俺の帰りを待っていてくれたみんな。
目頭が熱くなるのを感じた。
「ただい…っま…!」
喜びから溢れる涙をぬぐいさって笑いながらそう伝えれば、みんなも同じような笑顔を返してくれる。
ここは俺が帰ってくる場所。
自分を信じて待っていてくれた仲間のためにも、俺は早く元通りの、それ以上のテニスを出来るように頑張るんだ。
ずっと扉の所で立っていた俺を、丸井が早く早くと中へ招き入れる。
普段柳がデータをよく纏めているスペースを今日は色とりどりのお菓子が埋め尽くしていた。
その中央に置かれていたケーキは恐らく丸井の手作りだろう。
ケーキの上のメッセージの語尾が特徴的なものになっている。
導かれるままに腰を下ろして、俺は再度大好きな部員達へと言葉を贈る。
「みんな。…ありがとう」
照れくさそうに笑った彼らは、「さあ!退院祝いですよ!」という柳生の音頭を皮切りに俺の為のパーティーを始めたのだった。