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「は?あんた馬鹿なの?」


柳先輩のクラスから戻ってきた私への親友の最初の一言はこれだった。

いや、確かに自分でも馬鹿だと思うよ。血迷ったのもわかってる、うん。
でもそんな風にきっぱり言わなくてもいいんじゃ無いだろうか。

「だって知って貰いたかったし…」

「いや、そういう問題じゃないから」

言い訳を続けようとしたのを麻衣は問答無用で遮った。

「あんた入学した時のお礼言いたくて先輩のクラスに行ったんじゃ無かったの?何で戻って来て早々『付き合う事になった』なんて報告聞かされなきゃなんないのさ」

麻衣の主張も最もだと思う。確かに私はお礼を言いに先輩のクラスへ赴いたのだ。
でも実際に先輩を目の前にしちゃうと、こう、気持ちが溢れたというか本音がぽろりというか…。

言ってしまえば勢いで告白してしまったのだ。

それも頭に浮かんだ提案付きで。

それでも気持ちは本気だし、実際これまでに無い程のチャンスだと思う。

「でもさ、ほら。期間付きだけど付き合ってもらえる事になったし。何て言うんだっけ?終わり良ければ全て良しってやつだよ」

「始まったばかりじゃん。いきなり終わらせてどうすんの」

「冷静なつっこみありがとうございます」

そんな何気ないやり取りをしていたら麻衣がはあとため息を吐いた。

「まあ咲希がいいならいいけど、何かあったらちゃんと相談しなよ?」

どうやら先程までの罵りは心配から来ていたらしい。眉を下げて笑う麻衣に「ありがとう」とだけ返しておいた。

ほんわかとした空気が流れる。

「まあ、私はよく知らないけど柳先輩っていい人らしいもんね。その上勉強も出来てテニス部レギュラーなんでしょ?心配いらないかな」

「そうだっけ?」

麻衣のセリフを聞いてきょとんとする。この1年間柳先輩のことを見てきたが放課後の部活についてはノータッチだった。だって私帰宅部なんだもん、早く帰りたい。

私の返答を聞いた麻衣はあからさまに「は?」という顔をした。

「え、何。あんたまさか先輩の部活してる姿見たことないの?」

「信じられない」とでも言いたそうな彼女に頷いて返す。

「うん、というか先輩テニス部だったんだね。また見に行ってみようかな」

きっとテニスしてる姿もかっこいいのだろうと思いを馳せている私に麻衣は「そうした方がいい、絶対」と肩を掴んでまで訴えかけて来た。え、何でそんなに必死なの?え?

あまりにも真剣に言われる物だから、私は今日の放課後はテニス部見学にしようと軽い気持ちで決めたのだった。





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