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今まで恋だの何だのと縁の無かった自分が、まさかこんな行動に出るだなんて思ってもいなかった。

寧ろ誰も予想していなかっただろう。

へたれで奥手なことに定評のある私がこんな事をするなんて。


「柳先輩、好きです!私と付き合ってください!」


教室に響く私の告白。
時刻は丁度昼休みだ。つまり周りには人が沢山いるわけで。

何が起こったのか教室にいた先輩方も理解出来ていなかったらしくしん、と静まる室内。

それを打ち破ったのは、恐らく柳先輩のファンであろう女子生徒の叫び声だった。
それを聞いてはっとしたように教室内ではざわめきが起こる。

「悪いが、その気持ちに答える事は」

私が告白した当の本人もここでやっと自分が告白されていると認識したらしい。
彼の反応が遅かったのは予想外だったが、この返事は予想通りだ。
けど私はある提案を口にした。

「絶対私のこと好きにさせて見せますんで猶予を下さい」

柳先輩が答えようとした事により納まっていたざわめきが再び部屋を包む。
部屋の端から「何よあの子!!」なんてヒステリックな声が聞こえて来たがこの際無視だ。後が怖いが仕方ない。

馬鹿みたいな提案であるのは百も承知だ。
これを柳先輩が呑む確立だってかなり低い。それでも何も言わず告白だけで済ますよりも受け入れられる可能性はこちらの方が高いのだ。

私達の間に流れる沈黙。
じっと彼の顔から目を離さず見つめていれば、柳先輩が溜息を吐いた。

「なら2ヶ月だ。それ以上は呑めない」

「…! はい!」

先程までと別の意味で教室が騒がしくなるのがわかる。
そりゃそうだ。誰だって思わないだろう、あんな告白が受け入れられるなんて。

「よろしくお願いしますね、先輩」

挑戦的な目で先輩を見つめる。
折角掴んだチャンスなのだ、易々と手放す訳には行かない。

「ああ。楽しみにしているよ、華宮」

何故名前をだなんてもう愚問だろう。

この日から、私の戦いは始まったのだった―。




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