08 [ 8/11 ] 窓から入ってくる朝日が私の顔を照らしだす。 その眩しさに私の意識は段々と覚醒に向かっていった。 「……よし」 まだ眠気の残る身体をベッドから出す。 眠気を吹き飛ばす為にパンッと頬を叩けば頭がすっきりするような気がした。 早々に仕度を整えて家を飛び出す。 暖かい春の風を感じながら学校への道を進んで行く。その足取りは思いの外軽く、それによって昨日の出来事がどれほど嬉しかったのかがよくわかった。 昨日はなかなか眠れなかったのだ。睡眠時間は少ないわりに頭はすっきりしているのが救いなのだけれど。 電車に乗り込み立海の最寄り駅を目指す。 私が乗り込む頃にはもう立海の生徒の姿がちらほらあって、私もその中に混じる。 柳先輩は恐らくもっと早い時間なのだろう。先輩が降りて行った駅のホームに入った時、一番前の車両からさっと並んでいる人々を確認したがその中に柳先輩の姿は無かった。 やがて電車は目的の駅に着く。 電車から流れ出る人の波に身を任せ改札をくぐれば、もう学校はすぐそこだ。 何時も通りに校門を通ろうとした時、それはどこからともなく聞こえてきた。 「えーそれ本当?」 「まじまじいきなり教室に乗り込んで告白したらしいよー」 「うわ、何て大胆…柳くんもよくオーケーしたねー」 柳くん、という単語に声が聞こえてきた方向を振り返る。しかし声の主を突き止めることは叶わなかった。 そこにあったのは遅れまいと教室を目指す立海生の姿があるのみ。 「(気の、せい…?)」 思わず立ち止まってしまった私を人がどんどん抜かして行く。 「咲希?」 「え、あ…麻衣」 「おはよー!朝からそんな辛気臭い顔してどうしたのさ」 「おはよ。いや、うーん…何でもないよ」 「そ?」 可笑しな咲希と呟く麻衣はそのまま「ほら行くぞ!」と私の背中を押して玄関まで急がせた。 まだ朝のチャイムが鳴るには時間があるが早く席に着くに越したことはない。 素直に麻衣に従いながら私はせっせと靴を履き替えたのだった。 [*prev] [next#] |