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―柳視点―

意外と普通の奴なのかもしれない。
あまり取れてはいなかった華宮についてのデータに今日の分を追加していく。

昼の会話を思い出せば、到底まともだとは思えないが。

それでも帰り道での質疑応答では悪い奴には見えなかった。やはりあの告白は勢いにまかせて言ってしまったという確率が高いな。

…しかし。


「…2ヶ月は、長かったかもしれないな」


己が提案してしまったタイムリミット。それに頭を抱える。

データ通りに事が運べば何の問題も無い。しかしながら、昼間の件も含めて華宮はデータ外の行動をする可能性が高いのだ。

もとより彼女の思いに応えるつもりなどなかった。
返事を返した理由として挙げるなら純粋な"興味"だ。


「まあ、退屈はしないか」


開いていたノートをぱたりと閉じる。

次いで携帯へと手を伸ばせばそこには新着メールの文字。
確認すれば見たことも無いアドレスからのもので、件名欄には華宮咲希です!という文字があった。
そのまま本文欄へと目を下ろすと「今日はありがとうございました」と簡潔な文が書かれている。

会話からは想像もつかない程にシンプルなそれ。

また一つデータが増えたなと、俺は再度ノートを開いた。


データを変更しよう。
2ヶ月で何かが変わるかもしれない。

後悔と期待。
そんな気持ちを感じながら、俺はノートにペンを滑らせた。




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