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見ちゃった



※これは幸村夢「それは嘘」の親友サイドのお話です。これだけでも読めなくはないですが先にそっちを閲覧頂いた方が話が分かりやすいかもしれません。そして相手は管理人の趣味です、察してください。
何でもばっち来いな神様はこのままスクロールしてやってください。





放課後、図書室に忘れ物をしてしまった名前は自分の教室から図書室に走っていた。
ここまで慌てているのは今日は水曜日でいつもより早く図書室が閉まってしまうためだ。忘れたものが明日の授業の課題であるので放って置く訳にもいかず、自分の精一杯のダッシュで駆けている。
ふと渡り廊下へ出たときに、中庭の花壇の横を通れば図書室までの近道になる事を思い出した。
普段なら横着などせずに渡り廊下を使ったのだが今日ばかりは別だと花壇に向かって足を進める。と、進むにつれて花壇の逆サイド、植木の高くなっている奥から人の声が聞こえて来た。名前が何だろうと足を止め確認してみると、それはよく知った二人の姿だった。

佳奈美と…幸村くん?

一体こんな所で何をしているのだろうか?そんな些細な好奇心に負けて立ち止まる。その直後に驚くべき言葉を幸村が発した。

「佳奈美、俺は君が好きなんだ。付き合って欲しい」

名前はその場で硬直した。自分は幸村のことが好きだったのだ。気持ちを告げるつもりなどなかったが、まさかこのような形で失恋してしまうとは。
しかし、佳奈美が幸村の告白を受け入れるかどうかは分からない。以前恋バナを2人でしていた時も佳奈美は好きな人がいるなど一言も言っていなかったからだ。
2人の間には沈黙が流れている。と、幸村が「返事はいつでもいいよ」とその場を離れようとした。
きっと佳奈美が告白に戸惑っている事を察したのだろう。彼は気遣いが本当にうまい。しかし佳奈美はその腕を掴んでそれを止めた。
つまりもう心は決まっているということだ。受け入れるのだろう、そう名前は確信した。しかし、彼女の答えは名前の予想を裏切るものだった。

「幸村、ごめん…気持ちは嬉しいけど答えられないや…」

素直に驚いた。俯いているせいで佳奈美の顔は見えないが、彼女だって少しは幸村に好意を抱いていただろうに。
もしかすると別に好きな人がいるのかもしれないと思った。

「そ、っか…うん。わかった、ありがとう佳奈美。じゃあまたね」

佳奈美の言葉を聞いて幸村はそう言って立ち去った。恐らく部活に戻ったのだろう。
自分も図書室へ向かわないといけない、名前も行こうと背中を向けた。その時だ。

「っふえ…うっ」

それは明らかな泣き声で名前はぎょっとする。
振り返ってみれば泣き崩れている佳奈美の姿が目に飛び込んできた。
これでよかったと自分に言い聞かせている彼女に名前は直感した、彼女は彼が好きなのに断ったのだと。

でも、どうして…、そんな疑問を抱いた名前の頭に数日前の会話が思い起こされた。そうあの時自分は、

『私ね、幸村くんが好きなんだ』

確かにそう佳奈美に言ってしまっていた。

「…ばか」

自分の思い過ごしかもしれないでも。これは放って置く訳にはいかない。
翌日、くまを作っている佳奈美を見て名前そう決心したのだった。




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