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硝子一枚挟んだその向こうに君



鼻の上にいつもと違う違和感を感じる。
原因なんて明白で、近頃見えにくくなった眼を矯正するための眼鏡だ。最近の生活態度が問題だったのだろう、私の視力はここ最近でガタンと落ちてしまっていた。
それはもう今は検診の時期では無いというのに担任から眼科に行けと宣告されてしまうほどに。
わかってはいても消えない違和感にはあ、と溜息が出る。

「溜息などついてどうしたんだ?」

「ふやああ?!!」

気が抜けていたところに後ろから声をかけられビクリと肩が揺れた。
慌てて振り返れば見知った姿がそこにあって、私は柄でもなく大きな声を出してしまったことに恥ずかしくなる。柳くんはそんなこと少しも気にしていないようだったのだけども、それが返って私の羞恥心を刺激した。未だに驚いた時の名残で心臓がばくばくいっている。

「、すまない。驚かせるつもりは無かったんだが…」

私のあまりの動揺っぷりに困惑したのか、柳くんは一瞬変な顔をしてから申し訳なさそうにそう告げた。柳くんが謝る必要などないのにと少し胸が痛くなる。

「ううん、ちょっとびっくりしちゃっただけだから柳くんが謝ることないよ」

急いでそう繕うと、柳くんは安心したかのように柔らかい声で「そうか」と笑った。
その笑顔につられて笑えば柳くんは「そういえば…」と口を開く。

「苗字、お前は今まで眼鏡をかけていたか?」

突然の問いかけに直ぐに答えることが出来なかったが、私は問いかけの意味を理解してから首を横に振った。

「今日からだよ。ちょっと眼が悪くなっちゃってさ」

やっぱり眼鏡だと不便だねーと笑いながら照れ臭くて頭をかく。
柳くんから何の反応も得られなくて、不思議に思いふと彼の顔を見上げた。
そこにあったのはいつも通りの無表情な表情だったので私は少し気まずさを感じ「似合わないかな」と続ける。それでも柳くんは何も答えてくれなかった。
私達の間に流れている間が辛くて、ふと自分の腕にある時計に眼を向ければ時計の針は授業開始の二分前を指していてぎょっとする。次の授業は移動教室だったはずだ。

「っちょ、柳くんごめん…!私授業に遅れそうだからもう行くね!」

「っあ、ああ…」

彼が立っていた方向と逆に走りながら慌ててそう告げると、柳くんから了承の言葉が聞こえた。少し戸惑っていたのは気のせいだろうか?そんなことを考えながらもまず教科書の類いを取るために自分の教室を目指す。その時だ、後ろから「苗字」ともう一度声をかけられた。急いでいるのに何だと言うのか、そう思い振り返った私に柳くんはただ一言。

「眼鏡、似合ってるぞ」

と、それだけ伝えて自分の教室に引っ込んでしまった。
あまりのことに私は、顔を真っ赤にして立ちすくんだ。

この後私の思考が回復したのは始業チャイムが鳴った後だった。遅れた私が担当の先生にこっぴどく怒られたのは言うまでもない。

END


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初の夢小説でいまいち書き方がわかりません
H23.08.29




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