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真実は


部屋のすみにしゃがみこみ名前は泣いていた。
それを何を言うまでもなく見つめる俺。

泣いている名前の手の中には汚れた人形部を失っているキーホルダーが握られている。それは彼女がある男子にプレゼントしたものの残骸だ。
その持ち主は今頃病院のベッドの上で眠っていることだろう。

「ふぇっ、何で…何であの人が…!」

世間の理不尽な現実に名前は手の中のものを握り締めて嘆いた。
先日、彼女の彼氏は事故にあったのだ。聞いた話では学校の階段から突き落とされたらしい。
人に恨まれるような人物ではなかったと、彼の周囲の人々は口を揃えて言っていた。名前のこの様子を見てもそれは嘘ではないのだろう。
まだ犯人は見つかっていない。

「名前…」

余りにも痛々しい姿に口が開いた。
それでも気のきいたような言葉など思い浮かばなくて、ただ名前を呼ぶだけにとどまる。それでも名前にはしっかり届いていたようで俺の方に顔を向けた。
その目はとても虚ろだ。

「蓮二…」

光のない瞳が俺を映す。
泣きすぎたせいで目の周りは赤くなり腫れてしまっていた。そんな姿を見ていられなくて、そっと抱き締める。一瞬戸惑った名前も、恐る恐る縋るように腕を回してくれたので俺は安心させるように腕に力をこめた。

「蓮二…!蓮二…!私もうどうしたら…!!」

そう涙声で訴える名前。
そんな彼女に俺は「大丈夫だ、大丈夫」とただ慰めることしか出来ない。

俺のポケットの中で、チェーンの壊れた人形が鈴を鳴らしながら揺れた。

END

H23.09.09


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