風船が破裂したような音が連続して窓から届くのを手元の本に目を通すことで流していたら背中の扉を開けてネーニアが告げてきた。

「犬の声がうるさくて落ち着きません」

 季節柄騒ぐ生き物に普段なら気遣ってやれる兎も今回はすこし機嫌が悪い。反対に瞼を落とせるほど穏やかな自分の心内の似合わなさに地図の縁がぱたぱた揺れた。

「私に話をつけろとでもいうのですか」
「できるならば」
「きみが私に頼むから、燕でも鶏でも話してやるけれど、そこの犬ならきっと君が寄ったほうが言う事聞きますよ」

 未だ鳴り響く外の喚きはもはや関係なく、彼女は俯いた。風呂上がりの髪の色と比べて、その耳はほんのり赤く染まっていた。

「それなら落ち着くまでここにいます」と床に座る場所を探して目を泳がせた。
「素直に私と同じベッドに入りたいって言えばいいのに」
「そんなこと思ってない!」

 引き下がれなくなればお茶を用意しようと部屋を抜けるのも躊躇っていた。