もらった紅茶のペットボトルを握りしめて立つのは異常に馬鹿らしく思えた。私は校舎の出入り口からの一歩を踏み出せずにいた。トラファルガーさんは土の上をさくさく歩いて行った。秋の夕暮れは昼間よりずっと風が冷たかった。


「私、荷物置きっぱなしです」
「お前は数十歩取りに帰るのがそんなに嫌か」
「そういうわけじゃなくて」

 灰色のカーディガンを着た腕がふらふら揺れて、私はそれを見つめながら追いかけた。彼が砂場の前で止まったから私も並んだ。トラファルガーさんが腰に手を当てて一瞬空を見上げて、私はペットボトルを足元に置いた。



「面倒を受け持つのはあいつらだけで充分だって顔してる」
「それはそうですね」
「許容するのはそれで一杯一杯だ。想像はつく」


 左右の手が砂をいじるのをじっと見ていた。たまに彼の横顔を盗み見て気づいたのは、彼は瞬きが少ない人だった。私は自分の膝を指で触った。紫色のストッキングが砂で汚れる。