「ネーニア、お前、二年もそんなところに」
「お久しぶりです赤髪さん。あの時は本当にありがとうございました。私が今こうして生きていられるのもあなた方のおかげです。今ここにいられるのもあなたのおかげです。ごめんなさい敵だと思ってくださっていいんですよ」


 とんとんと喋ってしまうと赤髪さんは口をつぐんだ。悪いとは思うが、あなたが後悔することはひとつもない。わかった方が良いんですよ。


「ずいぶん慣れたようだな」


 もう一度赤髪さんが顔をあげた。諦め半分皮肉半分、どうしようもないという思いがおおよそといった様子。


「そうですね。あまり自覚はないのですが、かなり、らしくは、なってしまったようです。でも、相変わらずですよ。戦えませんし、頭もよくはありませんし、いつも雑用してます。だから、ほんとに、気にしなくて…うむ、あなたと話してると、私もよくわからなくなってきました。私もちょっとへんになったみたいです」


 へんなのはしってましたよ、と隣のラフィットさんがつぶやいた。あんたにいわれたくはない。


「どちらにせよですね、船長はまだあなた方とたたかうつもりはないので、この場はお別れをしたいと思います。それではまた」


 くるりと二人でゆらめく赤にさよならをし、向かい風を歩いていった。今でもたまに思う。わたしの知らない西の海を知るあなたは、はやくどこかへ行って欲しい。知ったような瞳はやめてほしい。悔しくてならないからだ。