04




夕方ごろ_。


「スーリ様!!」

「ダリューン、どうかして?」


城内を歩き回っていたスーリを見つけたダリューンは声をかけ、足早に駆け寄った。


「どちらへ?」

「ちょっと、気晴らしに…」


指で髪を遊びながら答えるスーリ。
笑ってはいるが、浮かない顔をしている。


「…心配ですか、殿下が」

「えぇ…。こういう時のために剣や弓を身に着けたというのに……なんとも、不甲斐ない…」


ダリューンは昔からスーリを知っていたため、剣などを習っていた当時も知っている。

当時、周りの人はみなスーリに反対をした。
唯一反対をしなかったのはナルサスぐらいだ。とはいっても、賛成もしなかった。どっちつかずという事。

そんな彼女に何故武芸を習いたいのだと問うた時がある。
その時、彼女は不思議そうに首をかしげたが後に微笑んでこう言った。



『アルスラーンや大切なものを守るために』



「姫様。ご心配なさらずに。このダリューンがスーリ様の分まで殿下を守ってお見せします」


スーリの紫の瞳を真直ぐと見つめ、ダリューンはそう言った。


「…わかりました。ダリューン、アルスラーンをよろしくお願いします」


どうか、私の分まで…。

そう願いを込め、スーリは彼の瞳を真直ぐと見つめ返し言った。
ダリューンは跪き、スーリの手を取り誓うように言う。


「は! このダリューン、必ずアルスラーン殿下をお守りし帰還致します」

「貴方もよ」


ダリューンはスーリの言葉に驚き、見上げると彼女は美しく微笑んでいた。


「貴方も、帰ってくるのです」

「…はっ!」


夕方の赤い太陽が二人を照らした。


そしてまもなく、アルスラーンの初陣が始まる。
城内でアルスラーンたちの帰りを待ったが、帰ってくることはなかった_。



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