夕方ごろ_。
「スーリ様!!」
「ダリューン、どうかして?」
城内を歩き回っていたスーリを見つけたダリューンは声をかけ、足早に駆け寄った。
「どちらへ?」
「ちょっと、気晴らしに…」
指で髪を遊びながら答えるスーリ。
笑ってはいるが、浮かない顔をしている。
「…心配ですか、殿下が」
「えぇ…。こういう時のために剣や弓を身に着けたというのに……なんとも、不甲斐ない…」
ダリューンは昔からスーリを知っていたため、剣などを習っていた当時も知っている。
当時、周りの人はみなスーリに反対をした。
唯一反対をしなかったのはナルサスぐらいだ。とはいっても、賛成もしなかった。どっちつかずという事。
そんな彼女に何故武芸を習いたいのだと問うた時がある。
その時、彼女は不思議そうに首をかしげたが後に微笑んでこう言った。
『アルスラーンや大切なものを守るために』
「姫様。ご心配なさらずに。このダリューンがスーリ様の分まで殿下を守ってお見せします」
スーリの紫の瞳を真直ぐと見つめ、ダリューンはそう言った。
「…わかりました。ダリューン、アルスラーンをよろしくお願いします」
どうか、私の分まで…。
そう願いを込め、スーリは彼の瞳を真直ぐと見つめ返し言った。
ダリューンは跪き、スーリの手を取り誓うように言う。
「は! このダリューン、必ずアルスラーン殿下をお守りし帰還致します」
「貴方もよ」
ダリューンはスーリの言葉に驚き、見上げると彼女は美しく微笑んでいた。
「貴方も、帰ってくるのです」
「…はっ!」
夕方の赤い太陽が二人を照らした。
そしてまもなく、アルスラーンの初陣が始まる。
城内でアルスラーンたちの帰りを待ったが、帰ってくることはなかった_。
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