「認めん!!」
奮い立ったのはガーデーヴィだった。
その場にいた全員が、彼に注目した。
「ガーデーヴィ」
「父上、私に王位をお譲りください」
「血迷ったか、ガーデーヴィ!」
剣を取ったガーデーヴィがカリカーラにそれを向け、ラジェンドラがそれを守るようにガーデーヴィに剣を向けた。
「神々の裁きに異を唱えるか!」
「こんな不当な裁き、誰が従うか! ……そうだ、神々が間違っているのだ!!」
叫ぶガーデーヴィの言葉に、スーリの傍にいたギーヴが冷笑した。
「この王子様、今頃気づいたらしい。神々はいつだって間違うし、間違った結果を人間に押し付けるのさ」
やがてガーデーヴィはラジェンドラを討ち取れと部下に命じ、ラジェンドラも同じように部下に命じた。
神前決闘を行ったというのに、再び両者は戦うこととなった。
アルスラーンやスーリは巻き込まれぬよう廊下に出て、この場を去ろうとする。
「巻き込まれてはなりませぬ。私たちは此処を……」
「いたぞっ!!」
去ろう、とナルサスが言おうとするとガーデーヴィの手先がアルスラーンたちに襲い掛かった。
ナルサスやエラム、アルフリードが剣を受け止める。
「アンタ達のために来てやったんじゃないか!」
「ギーヴ、ファランギース! スーリと殿下を!」
ナルサスは二人に近かった二人にそう投げかける。
「お二方、こちらへ!」
「えぇ!」
「わかった!」
「やれやれ、だな」
追ってくる手先を切り付け、ギーヴが三人と数人の兵の後を追う。しかし挟み撃ちをされ、行く手を憚れた。
剣を持っていないスーリやアルスラーンがどうすることもできずにいると、一人の兵がスーリに斬りかかろうと襲った。
「っ!」
「姉上っ!!」
しまったとファランギースらが思う。駆け付けたいが、邪魔が入ってそれもかなわない。
するとスーリは何者かに腕を引かれ、その場を助けられた。――ジャスワントだった。
「こちらへ」
「っわ!」
ジャスワントに腕を引かれ、廊下を走った。その後にアルスラーンも続く。
アルスラーンは目の前を走るジャスワントに問いかける。
「私たちを助けてくれるのか?」
「私は、あなた方にご恩があります。それに、他国の王族に何かあれば、シンドゥラの恥となります」
「ありがとう、ジャスワント」
スーリが素直に礼を述べる。
走っていると、やがて見晴らしがいい場所へ出た。そこではダリューンがシンドゥラの兵たちに叫んでいた。
「意義あるものは、俺に勝負を挑めっ!!」
静まり返った決闘場。
一人の兵が武器を落とすと、彼をたたえる声が響き渡った。事態は収束したのだ。
マヘーンドラは死に、ガーデーヴィは謀反を犯したと拘束された。
王は、ラジェンドラに決まったのである――。
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