03




パルス歴、三二〇年。

スーリは20となり、アルスラーンは14へとなった三年後。


スーリは増々美しい女へと成長し、アルスラーンは背も伸び声も幾分か低くなった。


自分の部屋で椅子に座り寛いでいると、駆け足で部屋に来たアルスラーンが扉を開け中へとが言ってきた。
アルスラーンの顔は稽古の後だったのか、顔に泥を付けていた。


「姉上!!」

「あら、アルスラーン。稽古は終わって?」

「はい!」


元気に答えた彼は笑顔でスーリに近寄る。
彼女は近くにあった布で、近寄ってきたアルスラーンの頬に手を添え、泥を拭った。


「ふふ、また泥も拭かずに」

「はは…」


アルスラーンははにかんで笑った。


「稽古はどう?」

「まだまだです…。しかし、前よりも上達しております!」

「よかったわね、アルスラーン」

「はい! 姉上を守るために、毎日頑張っております!」


褒められてうれしいのか、アルスラーンは年相応の笑顔を浮かべていった。
スーリもそれにつられ、優しく微笑む。


「…もうすぐ、初陣ね」

「はい…。まだ、不安ですが…。でも、私は大丈夫です!」


不安げな顔をする姉を安心させるかのようにアルスラーンは笑ったが、それでもぬぐえない不安を抱くスーリは、アルスラーンの両頬に手を添えた。


「私も、貴方と行けたらよかったのだけれど…」

「だ、ダメです!姉上は待っていてください!」


自分が女には必要ないと言われてきた剣や弓の使い方を、男たちを押しのいてまで身に着けたというのに……。

元々、アンドラゴラスが反対していたというのにそれを押しのけ、習っていたせいか今回の出陣に同行させてもらえなかった。


「…えぇ、待っているわ。だから無事でいて、アルスラーン。帰りを、待っているわ」

「…」


添えられた両手を包み込むように握り、スーリに笑いかけた。


「はい。必ず、姉上のもとに帰ります。だから、待っていてください」

「えぇ…必ず」


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