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タイミングを見計らって、アルスラーンとスーリは退席した場所へと戻ってきた。
ラジェンドラと話すためだ。

ラジェンドラは、ギーヴやファランギースと酒を多く飲んでいたため、頬が赤く染まっている。
そんなラジェンドラにスーリは声をかけた。


「ラジェンドラ殿。話の続きをしてもよろしくて?」

「おぉ、そうかそうか。話……なんだったか……」


酔いが回っているのだろうか。
酔っているであろうラジェンドラに、次はアルスラーンが口を開いた。


「貴方との同盟について」


内容が内容のため、ラジェンドラはしっかりとスーリやアルスラーンの瞳を見つめた。
座ったまま、二人と向かい合うように座り直し、話の続きを聞く。


「貴方と同盟を結びたいのです。まず我々は、貴方がシンドゥラの王位につけるよう、お手伝いして差し上げましょう」

「その代わり、おぬしの戦にも力を貸せと?」

「ええ、悪い話ではないと思いますが」


ラジェンドラの言葉にスーリ返す。
三人共に、薄い笑みを絶やさず言葉を繋ぐ。


「面白い事を言う。国を追われた王子王女に、何ができると言うんだ?」


ラジェンドラの言葉にエラムとアルフリードが抗議しようとするが、アルスラーンに手で制され引き退った。


「ですがラジェンドラ殿、こう言ってはなんですが、今の御身のお立場をよく考えていただきたい」


「脅迫のつもりか? 俺の身になにかあってみろ、俺の兵たちは決して貴様達を赦しはしないぞ」


「ふふ、そんな野蛮なことはいたしません」


柔らかにスーリが微笑む。

ナルサスに叩き込まれた話術によって、アルスラーンは離し続ける。
スーリは元々、ナルサスと共にいた時間も長いせいか、こういったことには慣れている。アルスラーンも隣にスーリがいて心強いであろう。

話の良いところまで行くと、二人の後ろで腕を組み立っていたナルサスが口を開く。


「ええ、というか既にシンドゥラ国内には通達してしまいました」


すっと一歩前に出て、ラジェンドラを見つめる。


「何を……」

「ラジェンドラ王子はパルス国の王太子、王女との間に、友誼と正義にもとずく盟約を結んだ、と」

「な、なんだと!?」


先ほどまでの悠然とした態度から一変、顔色を失ったラジェンドラにナルサスは容赦なく言い放つ。


「さらに王子はシンドゥラ国に平和をもたらすため、国都ウライユールに進撃を開始したとも」

「貴様ら……俺を反逆者に仕立て上げようとするのか!」

「もとより、いずれ第一王子ガーデーヴィとは雌雄を決するおつもりだったのでしょう、それが少し早まったことだけですよ」

「私は、貴方をガーデーヴィとの交渉に使いたくはない」


最後のアルスラーンの言葉に、ラジェンドラは苦虫を噛み潰したような表情で聞き、顔を俯かせたかと思うと、豪快に笑いだした。


「あはははははっ! やってくれたなパルスの王太子よ!」

「ご協力、してくださって?」

「あぁ。いいだろう、このラジェンドラがおぬしらに力を貸してやる!」


こうしてナルサスの思惑通り、ラジェンドラとの同盟が成立した。



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