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一方、ナルサスは再び銀仮面の男と出くわしていた。


銀仮面とナルサスの馬の足元には、銀仮面の一行に一掃されてしまったゾット族の亡骸が転がっていた。
ナルサスはそのゾット族の生き残りである少女を後ろに庇い、銀仮面と刃を交えながら会話をしていた。

早い剣裁きの繰り返しと銀仮面の怒号にも聞こえる必死な声、それらによって辺りは張り詰めた空気が流れる。


「今度こそ吐いてもらうぞ! スーリは何処だ!!」


「フン、可愛い妹分であり仕えるべき主君でもあるスーリを、易々と売るわけがなかろう!!」


「ふざけたことをッ!!」


お互いの剣がぶつかり合う。

ギリギリと音を立て、お互いの力をぶつけ合った。
交わった刃から摩擦で火花がいくつか散る。


「何故そこまでスーリに執着する!」

「貴様に何がわかるッ!!」


銀仮面がナルサスの剣を強い力ではじいた。


「アイツは俺の傍にいるべき存在だ! 俺だけが全てを知っている! アイツを救えるのは俺だけだッ!!」


一度、二度、三度とさらに強い力で剣を振りかざしてくる。
ナルサスは何とか剣をはじき攻撃を防ぐが後退していく。

やがて、ふとナルサスが少し上を見上げると数歩下がる。
そして笑みを浮かべた。


「貴様にスーリは渡さぬ、何があってもな」


ナルサスは少女を後ろに乗せると手綱をしっかりと握り、銀仮面に背を向け離脱した。

銀仮面は後に続こうとしたが、崖の上から計算されていたかのように岩が落下してくる。
そのままナルサスの姿は見失ってしまう。


「クソッ!」


数名の部下は岩の下敷きになってしまった。

銀仮面__ヒルメス__は、ナルサスが向かった方角を奥歯を噛み締めながら見つめた。


「堪るものか、あの小倅どもに…!!」


ヒルメスに溢れてくるのは深海よりも深い怒りと憎しみ、そしてスーリを思う想い。
ヒルメスは自分で自分を落ち着かせるため、深い思いは一度しまい込みそっと瞼を落とし、ゆっくりと息を吐き出した。


浮かび上がるのは、地下水路で出会ったスーリの姿。


やっとの思いで再会できた…だというのに、彼女は自分を__忘れていた。
瞼を上げたヒルメスは何度も心に誓ったことを、改めてもう一度誓った。


十六年間の思いを、もう一度_。



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