カシャーン城塞を抜ける際、アルスラーンはとある小屋に馬を進めた。
そこは奴隷がいるところだ。
スーリはアルスラーンを追おうとするが、ナルサスの手によってそれは阻まれた。
「やめておけ」
「でも、ナルサス」
「人はみな、自分の経験から学び成長する。お前もわかるはずだ」
真直ぐとそういわれ、スーリも何も言えなくなりただアルスラーンの背を見つめた。
やがて奴隷たちは主人であるホディールを討ったアルスラーンに反感し、仕事道具を手に襲い掛かってきた。
直ぐにダリューンが駆け寄り、七人はその場を後にした。
後ろを振り向くアルスラーンは混乱し、悲しそうに彼らを見つめていた。
夜も深く、その場に留まった七人は焚火を起こし今夜はここで野宿することにした。
アルスラーンはそこでナルサスが過去に行ったことを聞いた。
これでまた一つ、アルスラーンは成長する。
そう祈って_。
それでも、アルスラーンは肩を落としたまま地面を見つめた。
仕方ないことだ。けれど体は休めなければならない。
「アルスラーン」
スーリが声をかけるとアルスラーンは迷子になった子のような顔をして、ゆっくりとスーリを見た。
スーリは眠ろうと手で表す。
やがてアルスラーンはスーリの隣に寄り添い、彼女の優しさや温もりに包まれる。
心地いい温かさ_。
そんなものを感じながら、二人は目を閉じた。
二人が寝息を立て始めたころ、ファランギースは馬に乗せていた毛布をとり二人にそっとかけた。
その姿は姉に近い。
アルスラーンの寝顔は安心したように笑み、小さな子が母に寄り添うよう眠っていた。
「まるで、小さな子のようですね」
エラムが微笑ましそうに笑みを零しながら言った。
「仕方なかろう。殿下を唯一見てくれる肉親はスーリだけだ。年も離れているし、母のように見ているやもしれん」
ナルサスは焚火を小枝で突きながらエラムに言う。
「それにしても、殿下は殺し王女は捕らえよとはなぁ」
ギーヴはホディールの言葉を思い出した。
二人の対応が違っていたのだ。
「スーリ殿の身を誰かが狙っているのじゃろう」
「と、なると…」
「あの銀仮面か…」
ナルサスとダリューンは同じ人物を思い出した。
その特徴が吐かれ、ギーヴも一度であった銀仮面を思い出す。
確かに妙に執着していた_。
銀仮面が何故スーリを狙うか、今だ答えが出ない_。
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