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「着きましたよ、スーリ殿」


ギーヴは彼女の部屋のバルコニーに着くとスーリをゆっくりと下ろした。
振り返り、部屋を見るが誰かが入って何かをした模様はない。


「一応、他に何か仕組まれてないか見ますのでスーリ殿は少し待っていてください」

「なら私も…」

「ダメです! 待っていてください」


スーリに振り返りながら強めに言ったギーヴに押され、スーリは大人しく待つことになった。

ギーヴは部屋の隅々を調べ始める。
しかし、特に変わった様子も怪しいものもなく、毒はどうやら水だけらしい。

調べ終わったギーヴはファランギースのもとへ向かうため、再びバルコニーの縁に立つ。


「それでは、俺はこれで」

「えぇ。ありがとう、ギーヴ」


そういって見送ろうとする。
ギーヴはバルコニーに飛び移ろうと少し身をかがめる。その時、スーリが呼び止めた。


「ギーヴ、一つ…聞いてもいい?」

「ん? なんですか?」


ギーヴは不思議そうにスーリを見つめる。


「前に、貴方は私に忠誠を誓っていると言った。それは、本当に…?」


ギーヴは少し、スーリを見つめた後バルコニーから降り、スーリの前に立つ。
少し腰をかがめ、スーリの顔を下からのぞき込むように悪戯な顔を浮かべて言う。


「スーリ殿は俺の忠誠をお疑いに?」

「い、いや! 疑ってなど…!! ただ…」


スーリは覗かれたことに驚き、数歩後ろへ下がる。


「ただ…?」

「ただ……貴方は、自由だから。私に忠誠を誓わないほうがいいと思って…」


スーリは少し俯きながら言った。

そんなスーリを見てギーヴは笑みを浮かべる。
ギーヴはスーリに歩み寄り、目の前まで来ると膝をつき手を取った。


「俺はスーリ殿に一目で心奪われ、そして貴女自身の人柄に惹かれたのです。その美しさ、優しさ、俺が今知る貴女の全てに」


いつの日かのように、あの青緑の瞳が真直ぐと見つめていた。


「そして、いつかこの手で貴女に世界を見せたいのです」


世界を_。まだ知らない、見果てぬ世界。


「ギーヴ…」

「貴女に忠誠を誓いましょう。これは、その誓いの証です」


ギーヴはそっと手の甲に口づけを落とした。
その一時は短い時間だが、彼らにとっては長い時間のように感じられた。



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