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「母上がルシタニア王に結婚を迫られている…?!」


ダリューンとナルサスの報告にアルスラーンは声を上げた。
アルスラーンの隣で話を聞いていたスーリが言う。


「母上は、ルシタニアからしたら異教徒よ。母上をルシタニア王の妃になど…おいそれと出来るものかしら?」

「少なくとも、近いうちにどうとするのは無理でしょうな。強行すれば特に聖職者どもの反発を呼びましょうし、それに野心ある王族や貴族が絡めば内紛が生じるかもしれません」

「国王陛下にしても、とにかく生きておいでのようですから、お助けする機会はありましょう」

「うん、そうだな……うん」


アルスラーンは驚きのあまりか、歯切れ悪く言う。

取り敢えず、一度休もうとアルスラーンは隠れ家に足を歩める。
スーリも続けて歩く。

ダリューンは一度スーリを呼び止めようと息を吸ったが、肩に手を置いたナルサスによってそれは止められた。


「ナルサス」

「慌てるな。あの件に関しては俺に任せろ」


自身気に笑うナルサスに、ダリューンは任せることにした。

ダリューンは帰ってきたにもかかわらず、すぐに見回りに行くと言って反対方向へ足を向けた。
そんなダリューンを少し眺めた後、ナルサスはスーリのもとへ向かった。


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隠れ家の奥にある小さな部屋。


そこでナルサスは床に座り、目の前に行儀よく座る妹分__スーリ__に話を聞かせていた。
話の内容は外の国の歴史や文化、地理といったモノ。

ナルサスは目を輝かせ、自分の話を聞くスーリに目を細めた微笑む。

切りのいいところまで話終えると、少しの余韻を残しナルサスは切り出した。


「スーリ、銀仮面をした男を知っているか?」


スーリは目を見開いた。

彼女の頭の中では、ギーヴと逃げたときに出くわした時を思い出していた。
…あの男を思い出すと頭痛がするから、あまり考えたくなかったのだ。


「……」


ナルサスはスーリの顔が陰ったことに気付き、それ以上詮索するのをやめた。


「詳しい事は知らんが、あまり接触はするな。アイツはお前を狙っている」


スーリは答えずにただ首を縦に振った。
ナルサスはそんなスーリの頭をなでる。

するとスーリは黙ったままナルサスの膝に頭を寄せ、小さく横になった。


「まったく…可愛い妹分だ」


ナルサスは温かな視線を見送りながら笑み、頭をなで続けた。


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