一方、ギーヴは馬を歩かせていた途中、 スーリと並ぶほどの絶世の美女__ファランギースに出会っていた。
「で? 貴女はどこに向かっておいでで?」
笑みを浮かべたギーヴがファランギースに問うと、ス…と瞳を開いたファランギースが告げた。
「アルスラーン殿下とスーリ王女殿下のもとへ、行こうと思っておる…」
それを聞いたギーヴは瞳をパチパチと瞬きをした。
そして笑みに戻す。
「ほう…。ならば、俺もついていこう」
ファランギースは訝し気にギーヴを見た。
信用してもいい人かは分からないからだ。
「王女殿下には用があってな。ちょうど、王女探しをしてたところだ」
ギーヴはスーリが残した首飾りを懐から出し、それを指で遊びながら言った。
ギーヴの瞳はそれを愛おし気に見ており、それをファランギースは読み取った。
「…お主、王女殿下に忠誠を誓う者か…?」
「…フ……」
ギーヴは目を細め笑った。
こうして二人は殿下と王女殿下を探す、短き旅に出た_。
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夜_。
アルスラーンたちはカーラーンの部隊を見下ろしていた。
各自、ナルサスの作戦通り配置につく。
ナルサスは一人、崖の上で気陰に隠れながらカーラーンの部隊を見る。
「カーラーンめ、まんまと此処へ来たか…」
ナルサスがひとり呟く。
その直後、何者かの気配を察知し、間一髪女の攻撃を避けた。
葉が落ちる_。
お互いに剣と短剣を構え、向かい合う。
「…俺はアルスラーン殿下とスーリ王女殿下に仕えるものだ」
ファランギースはナルサスの言葉にはっとし、失礼したと短剣を太ももへ下ろした。
「私はミスラ神に仕える者。アルスラーン殿下とスーリ王女殿下にお力添えしたく、参上した」
「ほう、殿下たちに…。よし、では早速手伝ってもらおう」
ナルサスは疑うことなく、ファランギースを受け入れた。
それにファランギースは少しばかり驚く。
「私を疑わないのか」
「もしお主がカーラーンの者だったら、今すぐ叫んで私の所在を教えるだろう」
親指で部隊に指さす。
ナルサスはそれに、と続ける。
「今お二人の仲間は私を入れて三人。お主ら二人を入れて、五人となった」
ファランギースは木に隠れていたギーヴに目を移す。
「五人…」
ギーヴは自分を指さす。
まぁいいか。
どちらにしろ、スーリ殿のために来たのだし…。
そして、二人を入れた7人は作戦を実行した_。
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