01
「……――ッは!」
飛び起きるようにはっと意識が降って来て、目を覚ました。はあ、はあ、と短く呼吸を繰り返して、目を見開いたまま目の前の天井を見上げた。
なにが起きたんだ……そう自分に問いかけても答えは出てこない。
いくらか落ち着いた呼吸にそっと身体を起こすと、そこはベッドの上だった。辺りを見渡してみると、そこはオレが家を出る前に武臣や千壽たちと住んでいた家で、此処はオレの部屋だった。
なぜ、オレは此処にいる。
意味が分からず辺りを見渡しても、そこは見知った場所で、オレの頭は混乱した。そして自分を見下ろした時――信じられない事実に気づいた。
オレはすぐさまベッドから立ち上がって飛び出すように部屋を出た。そのまま急いで洗面所に向かって、鏡に映る自分の姿を見つめた。
そこには――十歳のオレが映っていた。
「は……どう、なってんだ……?」
夢を見ているのか。だとしたら、どこからどこまでが夢だ。オレは大人だったはずだ。その記憶もはっきりしている。なのに、なぜ目の前に映る自分は子供の姿なんだ。まるで、まるで……タイムリープしたみたいな。
そこではっとする。でもすぐに冷静になった。
タイムリープをしたときは、突然あるはずもない記憶が流れ込んでくる。オレはそれを知らないのに、まるでそうであったかのように、記憶が形成される。でもその時の感覚と今回は違う。それに、タイムリープをするにはトリガーが必要だ。だから、違う。
そう混乱する頭で冷静に状況を整理する。その時、ふと自分の姿に違和感を覚えた。
「……傷が、無ぇ……」
自分の口元を指で撫でる。でも、そこに痛々しい傷跡は綺麗さっぱり無かった。
これは、オレが傷をつけられる前の時間に巻き戻ったからか。それとも、そもそもそんなことすらなかったのか。そう頭の中でぐるぐる考えた時、オレは不意に疑問になった。
「傷……傷≠チて、なんのことだ……?」
そう口に出したとき、オレが今いったい何に動揺し、何を考えていたのか、全く思い出せなくなっていた。