――くらやみのなかにいた。

暗闇の中にいた、暗闇のなかにいた。
黒く染まった世界。闇に包まれた空間。

だれもいない、誰もいない。
閉ざされた箱。隔離された場所。

ここでは時間など感じない。ここでは時間など意味はない。
朝も夜もなく。太陽や月もなく。煌めく星々もない。

――そんな場所に、「わたし」はいた。

暗闇の中にいた、暗闇のなかに居た。
闇の中では何も見えない。「わたし」という存在すら、闇に包まれてわからない。

落ちていく、堕ちていく、墜ちていく。
漂っていく、流されていく、おちていく。

「わたし」はいま、おちているのか。
「わたし」はいま、ながされているのか。
それすらも分からない。そんな感覚すら、ここにはない。
けれど、「わたし」のこの瞳だけは、すべてを映し出していた。
瞼をあげる必要はない。目で見る必要はない。ただ瞳は事象を視つめるだけ。

時が流れていく、ながれていく。
時が動いていく、うごいていく。
時が変わっていく、かわっていく。

「わたし」はすべてを見通していた。

ここに時間の流れなど無くても、時の流れを「わたし」は見た。
時代の移り変わりを見つめた。変わりゆく世界を見つめた。

いったい幾つの時代が流れただろう。どれだけの年月が過ぎただろう。
指折ることをやめ、いつか来る日を待ち続けた。いつか来ると信じた。いつか来ると祈った。
「わたし」は奇跡を、まちつづけた。


――――。


暗中に、輝く、光。

光りなぞ存在しないこの暗闇に輝く、奇跡。
時にすら閉ざされたこの空間に降る、希望。

落ちているのかもわからないが、「わたし」は手を伸ばした。
自分の腕すら見えないなか、「わたし」はそれに必死に手を伸ばした。

なにを引き換えにしても良い。
なにを犠牲にしたって良い。
なにを失っても構わない。

「わたし」は奇跡に縋りたい。
「わたし」は希望を掴みたい。


待ち続けた。
待ちつづけた。
まちつづけた。

――叶えたい。

待ちつづけた。
待ち続けた。

――願った。

まち続けた。
まちつづけた。

――求めた。

まち続けた
待ちつづけた。
待ち続けた。



――あいたい。


極夜の孤獨







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