召喚されたサーヴァントは、未だ座り込んで自分を見上げる女を見下ろした。

太陽の瞳。
本当なら温かいであろうそれは、魔術師の軽蔑のせいか冷たく光る。


「貴様が余を召喚した魔術師か」


芯の通った低い声が轟く。
ディーアはその太陽の瞳を見返す様に、真っ直ぐと見つめ、はっきりと答えた。


「ええ。私が貴方を召喚した」


そう答えれば、サーヴァントは不愉快そうに「ふん、魔術師風情が、余を呼び起こすか」と愚痴をこぼした。
よほど魔術師が嫌いらしい。しかし、仕方あるまい。

ディーアは床に手を付き、座り込んだ体勢から立ち上がった。
そして目の前のサーヴァントを見上げる。


「貴様、余を召喚する際に触媒を使ったな? 余のミイラか……または、余の最愛たるネフェルタリの寝室を荒らしたわけではあるまいな……?」

「まさか」


目を細め、冷たく光った瞳で睨まれる。
普通の人間なら怖気づいて、足から崩れ落ちるであろう。

しかしディーアは恐れずに、否定する。


「そんな不埒な真似はしないわ。古代エジプトを治めた太陽王――オジマンディアス」


その名は有名だ。
広大な帝国を統治した古代エジプトのファラオのひとり。エジプト最高のファラオと名高い。オシリスの如く民を愛し、そして大いに民から愛された。

そんな彼にディーアはもの申す。


「死者は安らかに眠る。そんな場所を荒らす者がいるならば、私が断罪しましょう」

「断罪するのは王たる余の役目。貴様ではない」


ディーアは口元に笑みを浮かべながら胸に手を当て、軽く腰を低くする。
それはいつぞやの王にするように。


「問いに応えよ、余を召喚せし魔術師よ。当世の聖杯戦争で、貴様は何を求める」


下げていた頭をあげ、ラブラドライトの瞳を開ける。
そして告げる。

我が目的。
我が望み。
我が願い。
我が悲願。


「――――世界の救済を」

「なに?」


目を細め、眉を潜めた。
真偽を確かめるように、そのラブラドライトの瞳を見つめる。
オジマンディアスは口元を歪めた。それは笑みだ。


「余を伴って世界を救わんとするか。順序が違うぞ! 余が! 貴様を伴い、我が支配地たる世界を救うのだ。間違えるなよ」


ディーアは目を閉じ、応じるように朗笑する。


「貴様、名は」


沈黙。そして、


「ディーア、と」

「余を召喚した貴様の不敬を許す。だが、貴様をマスターだと認めたわけではない。努々、忘れるでないぞ」


これが、ライダーとして召喚された太陽王オジマンディアスとの、出会いの一夜であった。


01





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