赤色、緑色と放たれた数個の灯火はまるで花火のよう。けれどそれは花火のように散り散りになったりはせず、空中にとどまってほのかに輝き続ける。
あの光は人工的なモノでも自然的なモノでもない。魔術のそれだ。
頭上に灯る光を見上げ、ディーアは表情を歪めた。
「妙な灯火だな。みたところ、魔術でできているようだが」
浮かぶ光を見上げて、オジマンディアスは呟く。
「あれは勝利の灯火。『私は聖杯戦争に勝った』のだと、宣言している」
「だが、サーヴァントはセイバーにアーチャー、バーサーカー、そして余と余と同じくライダーが残っておろう」
忌々し気に灯火を睨んだまま答えたディーアに、オジマンディアスは瞳を向けた。
彼の言う通り、現在の脱落者はランサーとキャスター、アサシンの3騎。いまだ残り4騎とイレギュラーのライダー・オジマンディアスが残っている。
勝鬨をあげるのには早すぎる。
「ええその通り。だからあれは元の意味をなさず、こう言っている。『ここに聖杯がある』のだと」
ディーアは振り返る。見つめた。オジマンディアスを。彼女のサーヴァントを。
悔い。後悔。嘆き。歪んだ表情。赤い唇はつむんで、拳は震えた。
悔いに染まった彼女。
その唇が、ゆっくりと開いた。
「聖杯の運び手が、奪われた聖杯が、完成する――」
夜の暗闇。
その声は、神秘で不気味なこの夜に、とけるようだった。