二人が街の探索を終え拠点に向かう頃には、日が落ちかけた夕方頃だった。夕日が照らすなか誰もいない坂道を歩く。ディーアは数歩先を歩くオジマンディアスに世話話をするように声をかける。


「幾分か楽しめましたか、ファラオ」

「ふむ・・・・・・いささかこの町には遊戯が足らぬな」


後ろを振り向かないまま、オシマンディアスはちらりと街並みを見下ろして答える。「此処は地方都市ですからね、都会に出れば少しはマシになると思いますよ」冬木市は海に面しており、深い山もある。田舎というほどで栄えていないわけではないが、やはり都会と比べてしまうと劣ってしまう。

するとオジマンディアスは後ろを歩くディーアに振り返る。


「貴様も気が休まったのではないか?」


笑いかけたながら言うオジマンディアスに、ディーアは目を丸くする。「初めの貴様は見るに堪えなかったが、最近は幾分か顔色も良い」目の前に視線を戻したオジマンディアスが続ける。召喚した当時のディーアは見るからに疲弊していた。それを比べ、最近は彼女自身の明るさを取り戻している。「あの湿気た拠点では休息も出来ぬだろう」と零され、ディーアは「はは・・・・・・拠点替えも視野に入れておきます」と苦笑を零した。フッと笑われ、頷づかれる。

ディーアはしばらく前を歩くオジマンディアスの背を見つめた。

最近のオジマンディアスはどこか優しい。具体的に言えば、あの日、自分の素性や目的を離して以来だ。率直に言えば興味がわいたのだろう。だが、興味だけからみせる優しさだけではない気がした。先日に外へ出かけたときもそうだ。なにか、他の理由があるように感じた。

ディーアは意を決め、それを問おうと口を開いた。その瞬間、それは一瞬にして訪れた。


「――ッ!」


突然、魔術回路が疼いた。周囲に異常な魔力が生じているせいだ。異常過ぎると言っても過言ではない。膨大な魔力の収束を感じたのはディーアだけではないだろう。サーヴァントであるオジマンディアスも、この町に居る魔術師たちも、この異常さを感じ取った。


「・・・・・・河だな」

「・・・・・・ええ」


西の方角を見て、オジマンディアスは神妙な面持ちで呟いた。気付けば、とうに日は落ちていた。夜の訪れ――即ち、戦いが始まる。再び長い長い夜が今、幕を開けた。

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