太陽が姿を消し、月の時間が現れた。だいぶ夜も深くなったころ、オジマンディアスとディーアは自分の拠点へと踵を返し始めた。結局オジマンディアスが何をしたかったのかは分からなかったが、様子を伺うに、満足そうにしている。詮索をしないのが吉とディーアは黙って後ろを歩いた。

人気のない道。そのとき、空に雷鳴がとどろいた。目線を空へと上げると、そこにはチャリオットに乗ったライダーが空を駆けていた。チャリオットに乗るライダーはこちらに気づいたのか、真っ直ぐ向かってくる。

戦意がないことを察し、オジマンディアスもディーアも特に警戒態勢をとることなく、向かってくるチャリオットに目を向けた。


「よお、エジプトのファラオ! こんな場所でなにをしておるのだ?」

「なに、少しこの町の散策をしていたまでよ」


「おお! それは良いな!」現代を気に入っているイスカンダルは、オジマンディアスの言葉に目を光らせて力強くうなずいた。また今のオジマンディアスは現代服に身を包んでいる。イスカンダルはそれにも反応を示した。

ふと、チャリオットに視線を向ければ、全力疾走のチャリオットに乗せられグッタリしているウェイバーが見えた。相変わらずの様子らしい。


「そういう貴様はどこへ行くつもりだ?」

「この市場でなかなかのものを手に入れたのでな。今からセイバーのもとへ行き、一献交わしに行く途中だ」


イスカンダルの言う通り、チャリオットには1つの樽が積まれていた。中身はワインだろう。「貴様もどうだ?」イスカンダルはそう言ってオジマンディアスも宴に誘う。今宵は王の宴。ファラオであるオジマンディアスを誘わないわけはなかった。


「ふむ、良いだろう。『王の宴』にファラオである余が参加しない理由はあるまい」

「そうか! ではセイバーの拠点にて待っておるぞ」


そのままイスカンダルはチャリオットを走らせ、瞬く間にセイバーの拠点へと向かってしまった。

「セイバーの拠点は分かっておるのだろう?」背後にいるディーアに視線を向け、オジマンディアスは問う。「ええ。外れの森の中にある城が、アインツベルン――セイバーの拠点です」ディーアは頷き、それに答えた。

オジマンディアスはそれを聞くと、遠くに見える森を視界に収めた。そして無言のまま、再び歩き出す。釣られるように後を付いて行き、疑問を投げかける。


「向かわないのですか?」


向かうのなら、すぐにでもライダーの移動手段である宝具――闇夜の太陽船メセケテットを展開しそうだ。それをせず歩き出したオジマンディアスにそう投げかければ、笑みを浮かべて振り返りながら答えた。


「なに、気が向くまで徒歩かちで行くのも良いだろう」

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